
炭化コルクは、コルクを加熱・膨張させてつくる自然素材系の断熱材です。
細かな気泡に空気を含むため断熱性があり、吸放湿性や吸音性も期待できます。
結論からいうと、
炭化コルクは断熱性能だけでなく、湿気への対応や外壁への応用まで考えられる多機能な断熱材です。
ただし、断熱性能が特別に高いわけではなく、炭化コルクだけで結露を防げるわけでもありません。
また、「吸湿・放湿できるのは自然素材系断熱材だけ」とは断定できません。断熱材によって湿気の吸収量や放出量に差があるため、素材単体ではなく、壁全体の構成と施工方法を確認することが重要です。
炭化コルクは断熱材として優秀なのか

炭化コルクは、断熱性、吸放湿性、吸音性などをあわせ持つ点で優秀な断熱材といえます。
一方で、断熱材としての優秀さは、熱伝導率の数値だけでは判断できません。必要な厚さを確保できるか、隙間なく施工できるか、建物の湿気を適切に排出できるかまで含めて評価する必要があります。
炭化コルクとはどのような断熱材?
炭化コルクは、コルク樫の樹皮を原料にした断熱材です。ワイン栓などを製造するときに生じる端材を細かくし、高温の蒸気と圧力を加えてボード状に成形します。
コルクに含まれる成分によって粒同士を固めるため、合成接着剤を加えずに製造された製品があります。建築用の発泡コルク断熱材については、ISOでも製品規格が設けられています。
炭化コルクの断熱性能はどのくらい?

断熱材の性能は、主に「熱伝導率」で表されます。熱伝導率は、数値が小さいほど熱を伝えにくいことを示す指標です。
国内で流通している炭化コルク製品では、熱伝導率として
0.038~0.041W/m・K程度の数値が示されています。
製品によっては、グラスウール16Kと同程度の断熱性能ということになります。
ただし、熱伝導率が同じでも、施工する厚さが違えば壁全体の断熱性能は変わります。断熱材を比較するときは、熱伝導率だけでなく、厚さを含めた熱抵抗値や、住宅全体の断熱性能を確認しましょう。
炭化コルクが優秀といわれる理由
炭化コルクの強みは、断熱性能だけではありません。内部に細かな気泡を持つため、吸音性や衝撃をやわらげる性質も期待できます。
さらに、湿度の変化に応じて水分を吸収・放出する性質があります。断熱、吸音、吸放湿といった複数の性能を一つの素材に期待できることが、炭化コルクの特徴です。
一方で、流通量や施工実績は一般的なグラスウールほど多くありません。材料費だけでなく、施工できる住宅会社や職人が見つかるかも確認する必要があります。
| 比較項目 | 炭化コルク | グラスウール | 発泡プラスチック系断熱材 |
|---|---|---|---|
| 主な原料 | コルク樫の樹皮 | ガラスを原料とする繊維 | ポリスチレンやウレタンなど |
| 断熱性能 | 一般的な住宅用断熱材として十分な性能を持つ | 密度や製品によって異なる | 製品によって高い断熱性能を持つ |
| 吸放湿性 | 水分を吸収・放出する性質がある | 吸放湿性能は比較的小さい | 吸湿しにくい製品が多い |
| 吸音性 | 期待できる | 期待できる | 製品によって異なる |
| 接着剤 | 合成接着剤を使わない製品がある | 製品によって結合材を使用 | 樹脂を発泡させて製造 |
| 流通・施工 | 取り扱う会社が限られる場合がある | 広く流通している | 広く流通し、種類も多い |
| 主な注意点 | 厚さ、雨仕舞い、防火仕様の確認が必要 | 隙間やたるみ、防湿施工に注意 | 継ぎ目や防火、種類ごとの特性に注意 |
どの断熱材にも長所と注意点があります。炭化コルクが常に最も高性能というわけではなく、求める性能や構造工法と相性が良いかどうか判断することが大切です。
吸湿・放湿できるのは自然素材系断熱材だけ?

吸湿・放湿は、自然素材系断熱材だけに限られた性質ではありません。
断熱材には、それぞれ異なる水分の吸着性、透湿性、保水性があります。
ただし、セルロースファイバーや木質繊維、炭化コルクなどの植物由来素材は、湿気を一時的に保持して放出する性質が比較的大きい傾向があります。
吸放湿性と透湿性の違い
吸放湿性とは、周囲の湿度が高いときに水蒸気を取り込み、湿度が下がったときに放出する性質です。湿度の急激な変化を緩やかにする働きは、「湿気をため込むこと」とは異なります。
透湿性とは、水蒸気を素材の反対側へ通す性質です。
つまり、吸放湿性と透湿性は同じではありません。
- 吸放湿性:水分を一時的に取り込み、再び放出する
- 透湿性:水蒸気を素材の中に通す
- 吸水性:液体の水を取り込む
断熱材を選ぶ際は、これらを分けて考えることが重要です。
自然素材系断熱材は湿度変化を緩やかにしやすい
炭化コルクやセルロースファイバーなどの植物由来素材は、多孔質や繊維質の構造を持っています。そのため、周囲の湿度に応じて水分を吸着・放出する性質があります。
セルロース系断熱材についても、湿気を蓄えて放出するモイスチャーバッファーとしての性質が研究されています。
一方、グラスウールなどの無機繊維系断熱材は、水蒸気に対する感受性や吸湿性が比較的小さいとする研究があります。
発泡ポリスチレンにも水分の吸着や移動は起こりますが、炭化コルクやセルロースと同じ調湿材として扱えるわけではありません。
そういう意味では、自然素材系断熱材は、湿気を一時的に保持して放出する能力を期待しやすいと言えると思います。
炭化コルクだけで結露は防げない
炭化コルクに吸放湿性があっても、壁の中へ入る水蒸気の量が多すぎたり、外へ排出できなかったりすれば、内部結露が起こる可能性があります。
また、断熱材が壁や天井の内部に施工されている場合、室内側の仕上げ材や防湿層によって、室内の湿度を直接調整する効果は変わります。
結露対策では、炭化コルクの性能だけでなく、次の要素を一体で考えます。
- 室内側からの湿気の流入を管理する
- 壁の外側へ湿気を排出できる構成にする
- 雨水が壁内へ入らないようにする
- 断熱材を隙間なく施工する
- 地域の気候に合った防湿・透湿設計にする
炭化コルクは湿気に対応できる断熱材ですが、「防湿層や通気計画が不要になる素材」ではありません。壁全体の湿熱設計を施工会社に確認することが大切です。

炭化コルクは外壁材としても使える?
炭化コルクは、製品と工法を選べば建物の外側に使用できます。
ただし、「外側に使える」という言葉には、外張り断熱材として壁の中に使用する方法と、表面を見せる外装仕上げ材として使用する方法があります。
一般的な炭化コルクボードを、そのまま外壁として張れるとは限りません。
外張り断熱材として使える
外張り断熱とは、柱や構造用面材の外側に断熱材を施工し、建物を包む工法です。
炭化コルクはボード状に成形されているため、建物の外側に連続して張る外張り断熱材として利用できます。柱などを介して熱が移動する部分を減らしやすく、断熱層を連続させやすいことが特徴です。
無添加住宅では、炭化コルクを外張り断熱材として施工し、その上を漆喰で仕上げる外壁工法が採用されています。炭化コルクが断熱材と塗り壁下地の役割を担う構成です。
ただし、使用できる厚さや固定方法、下地、雨水の排出方法は工法によって異なります。メーカーや住宅会社が定める標準仕様と施工方法を確認しましょう。
外壁の表面に見せる使い方もある
炭化コルクの黒い色や凹凸を活かし、表面を塗装せずに見せる外装用製品も実用化されています。
三菱地所ホームが開発した外装用炭化コルクは、コルクの端材を粉砕・加熱し、合成接着剤を使わずに成形した外装材です。同社は、45分準耐火建築物に使用できる施工方法も開発しています。
さらに、無添加住宅のMDファサードも外壁材として使用できる炭化コルクです。
炭化コルクを外壁材に採用するのは、実は特別なことではありません。
有名なところでは2010年の上海万博のポルトガル館の外壁も炭化コルクでした。
このように、炭化コルクを外壁の仕上げ材として見せることは可能です。ただし、これは外装用途として開発された製品と認定された施工方法を用いた事例です。
断熱用の炭化コルクボードを、そのまま屋外へ露出させてもよいという意味ではありません。

ポルトガル館イメージイラスト

エコルクホテルのイメージイラスト
外壁に使うときの注意点
外壁は、雨、風、紫外線、温度変化、火災などの影響を直接受けます。そのため、室内や壁内で使用する断熱材よりも厳しい性能が求められます。
炭化コルクを外壁に使用する場合は、次の点を確認しましょう。
- 外張り断熱材と外装仕上げ材のどちらに使うのか
- 屋外への露出が認められた製品か
- 防火地域や準防火地域で使用できるか
- 必要な防火・準耐火認定を取得した工法か
- 雨水を内部へ入れず、外へ排出できる構成か
- 強風に耐えられる固定方法か
- 退色や汚れをどのように捉えるか
- 補修や交換に対応できるか
炭化コルクは自然素材ですが、自然素材だから無条件に長持ちするわけではありません。外壁として使う場合は、製品の耐候性や認定仕様、施工実績まで確認することが重要です。
まとめ
炭化コルクは、コルクの内部にある細かな気泡を活かした自然素材系の断熱材です。断熱性だけでなく、吸放湿性や吸音性など、複数の性能を期待できます。
- 炭化コルクの熱伝導率は、製品によって0.038~0.041W/m・K程度
- 断熱材として十分な性能があるが、厚さと施工精度も重要
- 合成接着剤を加えずに成形した製品がある
- 湿気を吸収し、周囲が乾燥すると放出する性質がある
- 吸湿・放湿は自然素材だけの性質とは断定できない
- 炭化コルクだけで内部結露を防げるわけではない
- 外張り断熱材や漆喰外壁の下地として使用できる
- 専用製品と認定工法を使えば、表面を見せる外装にもできる
炭化コルクは、熱伝導率の数値だけでなく、湿気や音、使用する材料まで考えて断熱材を選びたい方に向いています。
採用を検討するときは、「炭化コルクを使っているか」だけで判断せず、施工する厚さ、壁の湿気対策、防火認定、外壁全体の構成まで確認しましょう。
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この記事を書いた人

中川 高士
中川 高士(あまねこう代表)
大手ハウスメーカーから地域ビルダー、小規模工務店まで30年以上の建築経験を持つ。
営業から現場管理まで一貫して携わり、現在は京都で自然素材を活かした住まいづくりを提案。
10年後に「この家でよかった」
と思える暮らしが増えることで、地域が豊かになることを目指す。
【保有資格・公的な役職】
・建築物石綿(アスベスト)含有建材調査者
・愛犬家住宅コーディネーター
・ホウ酸施工管理技士
・空気測定士
・向日市固定資産評価審査委員会委員
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