
「毎月8万円の家賃を払うなら、8万円の住宅ローンを組んだ方が得なのでは?」
家を買うか、賃貸に住み続けるかを考えたとき、よく出てくる比較です。
先に結論をお伝えすると、家賃8万円と住宅ローン8万円を比べるだけでは、どちらが得かは分かりません。
賃貸は、住み続ける限り家賃がかかります。
一方、持ち家は住宅ローンを完済すれば毎月の返済は終わりますが、購入時の諸費用や固定資産税、修繕費などが必要です。
また、持ち家には土地や建物が残りますが、将来いくらで売れるかは、立地や建物の状態によって変わります。
この記事では条件を単純化し、家賃8万円と住宅ローン8万円を50年間支払った場合の違いを整理します。
なお、この記事は「費用の比較」に絞っています。
金額だけでなく、働き方や家族構成から賃貸が向いている人については、関連記事の
「『一生賃貸』は後悔する?あえて賃貸にいた方が良い人の特徴とは?」
で詳しく整理しています。
- 1. 家賃8万円と住宅ローン8万円は同じ住居費ではありません
- 2. 家賃8万円を50年間支払うと4,800万円
- 3. 住宅ローン8万円を35年間支払うと3,360万円
- 4. 持ち家には住宅ローン以外の費用がかかる
- 4.1. 住宅購入時の諸費用
- 4.2. 固定資産税
- 4.3. 修繕・メンテナンス費用
- 5. 賃貸にも家賃以外の費用がある
- 6. 持ち家には資産が残るが、購入価格のままではありません
- 7. 団体信用生命保険も持ち家と賃貸の違い
- 8. 50年間の住居費は、一つの数字では決められません
- 9. 比べるべきなのは毎月の8万円だけではありません
- 10. まとめ|持ち家と賃貸は50年間の暮らし全体で比べる
家賃8万円と住宅ローン8万円は同じ住居費ではありません
毎月の支払額が同じ8万円なら、
「家賃は何も残らない」
「住宅ローンなら最後に家が残る」
と考えたくなるかもしれません。
たしかに、住宅ローンを完済すれば、土地や建物は自分たちの資産として残ります。
ただし、住宅ローンの返済額だけが持ち家にかかる費用ではありません。
住宅を購入するときには、登記に必要な登録免許税、不動産取得税、契約書の印紙税などが発生します。仲介物件であれば、仲介手数料が必要になることもあります。
購入後も、
・固定資産税
・火災保険や地震保険
・外壁や屋根の修繕
・給湯器や設備の交換
・庭や外構のお手入れ
などが必要です。
分譲マンションの場合は、住宅ローンとは別に管理費や修繕積立金がかかります。修繕積立金は、共用部分の将来の修繕に備えるための費用であり、室内の設備交換やリフォーム費用まで含まれているわけではありません。
つまり、
家賃8万円と住宅ローン8万円は、同じ8万円でも中身が違う
ということです。
家賃8万円を50年間支払うと4,800万円
まずは、賃貸住宅の家賃を単純に計算してみます。
30歳から80歳までの50年間、毎月8万円の家賃を支払うとします。
8万円×12か月×50年=4,800万円
家賃だけで考えると、50年間の支払額は4,800万円です。
ただし、実際には家賃以外にも、
・契約時の初期費用
・契約更新時の費用
・火災保険料
・保証会社の利用料
・引っ越し費用
・駐車場代
などがかかる場合があります。
反対に、住み替えることで家賃を下げることもできます。
こどもが独立したあとに小さな住まいへ移る。
勤務先が変わったときに、通勤しやすい場所へ移る。
収入が減ったときに、家賃の低い住宅を選ぶ。
このように、暮らしの変化に合わせて住居費を調整しやすいことは、賃貸の大きな特徴です。
したがって、50年間ずっと同じ家賃8万円の家に住み続けるという計算は、あくまでも比較のための一例です。
住宅ローン8万円を35年間支払うと3,360万円
次に、住宅ローンの毎月返済額を8万円、返済期間を35年間として計算します。
8万円×12か月×35年=3,360万円
単純な返済額の合計は3,360万円です。
賃貸の家賃4,800万円と比べると、
4,800万円-3,360万円=1,440万円
となり、住宅ローンの方が1,440万円少なく見えます。
住宅ローンを完済したあとの15年間は、ローン返済がないためです。
これだけを見ると、
「やはり持ち家の方が得ではないか」
と思うかもしれません。
ただし、住宅ローンの毎月返済額が8万円だからといって、借りられる金額が一律に決まるわけではありません。
借入期間、金利、固定金利か変動金利か、ボーナス返済の有無などによって、借入可能額や総返済額は変わります。
また、住宅ローンを完済しても、住まいにかかる費用がすべてなくなるわけではありません。
持ち家には住宅ローン以外の費用がかかる
持ち家の50年間の費用を考えるときは、住宅ローン以外の支出も含める必要があります。
住宅購入時の諸費用
住宅を購入するときには、建物や土地の代金以外にも費用が発生します。
代表的なものは、
・登記費用
・登録免許税
・不動産取得税
・印紙税
・住宅ローンの手数料
・火災保険料
・仲介手数料
などです。
注文住宅の場合は、土地の状態によって造成工事や地盤改良工事が必要になることもあります。
「3,000万円の家を買う」という場合でも、実際に準備する金額が3,000万円だけで済むとは限りません。
固定資産税

土地や建物を所有している間は、固定資産税などがかかります。
金額は、土地や建物の評価額、建物の構造、広さ、地域、軽減措置などによって異なります。
新築時の金額が、そのまま50年間続くわけでもありません。
修繕・メンテナンス費用
住宅は、完成したら何もしなくてよいものではありません。
屋根、外壁、防水、給湯器、水まわり設備などは、建物の状態を見ながら点検や修繕を行う必要があります。
長く住む住宅では、将来の点検や修繕を計画しておくことが大切です。
ただし、
「50年間で必ず600万円かかる」
というように、一つの金額で決めることはできません。
建物の大きさ、使用する材料、施工方法、立地、日頃のお手入れによって、必要な工事も費用も変わるからです。
初期費用だけを抑えた結果、定期的に大きな修繕が必要になる住宅もあります。
一方、傷んだ部分を小さなうちに直し、長く使える材料を選ぶことで、大規模な工事を減らせる場合もあります。
持ち家の費用を考えるときは、建築費だけではなく、
何年後に、どのような修繕が必要になる家なのか
まで確認することが重要です。
賃貸にも家賃以外の費用がある
持ち家だけでなく、賃貸にも家賃以外の支出があります。
物件や契約条件によって異なりますが、
・敷金や礼金
・仲介手数料
・保証会社の利用料
・更新料
・火災保険料
・引っ越し費用
・駐車場代
などが考えられます。
また、同じ住宅に50年間住み続けられるとは限りません。
建物の建て替え。
家族構成の変化。
勤務先の変更。
高齢になってからの住み替え。
こうした事情で転居すれば、そのたびに契約や引っ越しの費用が発生します。
一方で、住宅の屋根や外壁、給湯器などの大きな修繕を、自分ですべて計画して負担する必要がないことは賃貸の特徴です。
持ち家のように資産は残りませんが、住み替えやすさと、建物を所有しない身軽さがあります。
持ち家には資産が残るが、購入価格のままではありません
持ち家と賃貸の費用比較で、大きな違いになるのが資産です。
賃貸では家賃を支払い続けても、借りている建物や土地が自分のものになるわけではありません。
持ち家の場合は、住宅ローンを完済したあとも土地や建物が残ります。
ただし、
3,000万円で購入した家が、50年後にも1,500万円で売れる
と単純に決めることはできません。
資産価値は、
・土地の場所
・周辺の利便性
・人口や住宅需要
・接している道路
・建物の状態
・耐震性や断熱性
・修繕やリフォームの履歴
などによって変わります。
また、自宅の価値が1,500万円あったとしても、住み続けている間に、その1,500万円を生活費として使えるわけではありません。
売却する場合も、仲介手数料などの費用がかかることがあります。
資産価値を考えることは大切ですが、
将来の売却価格を、今の住居費からそのまま差し引く
という計算は、少し乱暴です。
持ち家は「住む場所」であると同時に、将来売却したり、家族へ引き継いだりできる資産でもある。
そのように考える方が現実的です。
団体信用生命保険も持ち家と賃貸の違い
住宅ローンを考えるときには、団体信用生命保険、いわゆる団信の存在もあります。
団信に加入している住宅ローンでは、契約者が死亡した場合や、所定の状態になった場合に、保険金が住宅ローンの返済に充てられる仕組みがあります。
保障される条件や範囲は、金融機関や団信の種類によって異なります。
条件を満たして残りの住宅ローンがなくなれば、家族には住まいを残せる可能性があります。
賃貸の場合は、契約者に万が一のことがあっても、その後の家賃が自動的になくなるわけではありません。
ただし、団信もすべての病気や事情を保障するものではありません。
家を購入するときは、住宅ローンの金利だけでなく、団信の保障内容も確認する必要があります。
50年間の住居費は、一つの数字では決められません
家賃8万円と住宅ローン8万円を単純に比較すると、次のようになります。
| 比較項目 | 賃貸 | 持ち家 |
|---|---|---|
| 毎月の支払い | 家賃8万円 | 住宅ローン8万円 |
| 支払期間の例 | 50年間 | 35年間 |
| 単純な支払額 | 4,800万円 | 3,360万円 |
| 購入時の諸費用 | 原則なし | あり |
| 固定資産税 | なし | あり |
| 建物の大規模修繕 | 原則として所有者側 | 自分で負担 |
| ローン完済後の返済 | 家賃が続く | 返済は終了 |
| 土地・建物 | 残らない | 残る |
| 住み替え | 比較的しやすい | 売却や賃貸化の検討が必要 |
表だけを見ると、持ち家と賃貸の違いは分かりやすくなります。
ただし、実際の50年間では、
・家賃が上がるか下がるか
・途中で住み替えるか
・住宅ローンの金利がどうなるか
・どの程度の修繕が必要になるか
・土地や建物にどれだけ価値が残るか
によって結果は変わります。
そのため、
賃貸は4,800万円
持ち家は3,360万円
だから持ち家の方が1,440万円得
とは言い切れません。
同じように、
持ち家は税金や修繕費がかかる
だから賃貸の方が得
とも言い切れません。
比べるべきなのは毎月の8万円だけではありません
持ち家と賃貸を比較するときに大切なのは、毎月の支払額だけではありません。
少なくとも、次の項目を整理する必要があります。
・何歳まで働く予定なのか
・老後も家賃を支払えるのか
・住宅ローン完済時は何歳なのか
・購入後の修繕費を準備できるのか
・住みたい地域が決まっているのか
・転勤や住み替えの可能性があるのか
・家を家族へ残したいのか
・身軽さと所有する安心感のどちらを重視するのか
住まいは、数字だけで決めるものではありません。
ただし、数字を確認せずに決めてよいものでもありません。
「家賃がもったいないから」
「住宅ローンが家賃と同じだから」
という理由だけで家を購入すると、固定資産税や修繕費を見落としてしまうことがあります。
反対に、
「持ち家はお金がかかるから」
という理由だけで賃貸を選ぶと、老後も続く家賃や、資産を持たないことへの不安が残るかもしれません。
まとめ|持ち家と賃貸は50年間の暮らし全体で比べる
家賃8万円と住宅ローン8万円を比較する場合、毎月の支払額だけでは、どちらが得かは判断できません。
賃貸では、住み続ける限り家賃が必要です。
持ち家では、住宅ローン以外に購入時の諸費用、固定資産税、保険、修繕費などがかかります。
一方で、住宅ローンを完済すれば返済は終わり、土地や建物が資産として残ります。
大切なのは、
どちらの支払額が少ないか
だけではありません。
どちらなら、自分たちの暮らしを無理なく続けられるか
を考えることです。
家賃と住宅ローンを比較するときは、毎月の金額ではなく、購入時から老後までの住居費を一度整理してみてください。
京都市で住まいづくりを手掛ける「あまねこう」では、借りられる住宅ローンの金額ではなく、住み始めてから無理なく支払い続けられる金額を大切にしています。
持ち家と賃貸で迷っている場合も、最初から家を買うことを前提にせず、これからの暮らしと費用を一緒に整理していきます。
※この記事の計算は、持ち家と賃貸の違いを整理するための単純な試算です。実際の費用は、家賃、住宅ローンの金利、税金、保険、修繕、物件の資産価値などによって異なります。個別の資金計画は、金融機関、税理士、ファイナンシャルプランナーなどの専門家にもご確認ください。
京都市で家を建てるなら
地元の工務店へ
京都での家づくりには、少し気をつけておきたい地域特有の事情があります。
たとえば「景観条例」に代表される独自のルールや、道幅が狭く土地の形が複雑な場所が多いことなど、他の地域とは少し異なる条件があるためです。
そうした背景をふまえると、地元での経験が豊富で、京都の家づくりに慣れている工務店を選ぶことが、安心につながるポイントになってきます。
土地や法規制に合わせたご提案や、現場でのスムーズな対応など、地域をよく知る工務店だからこそできることがあります。
この記事を書いた人

中川 高士
中川 高士(あまねこう代表)
大手ハウスメーカーから地域ビルダー、小規模工務店まで30年以上の建築経験を持つ。
営業から現場管理まで一貫して携わり、現在は京都で自然素材を活かした住まいづくりを提案。
10年後に「この家でよかった」
と思える暮らしが増えることで、地域が豊かになることを目指す。
【保有資格・公的な役職】
・建築物石綿(アスベスト)含有建材調査者
・愛犬家住宅コーディネーター
・ホウ酸施工管理技士
・空気測定士
・向日市固定資産評価審査委員会委員
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