空気測定士が新築住宅内の空気について説明します

新築住宅を考えるとき、「新しい家だから空気もきれいそう」と感じますか。

ひょっとしたら空気のことなどは意識の外にないでしょうか。

そんな中、「新築の室内より、外の空気のほうがきれいなのでは」と不安になる方も一定数いらっしゃいます。

実はこの疑問はとても自然です。

とくにシックハウス症候群や化学物質のことが気になると、室内空気と室外の空気のどちらがきれいなのか、はっきり知りたくなるものです。

ただ、ここで大切なのは、室内と室外のどちらが絶対にきれい、と単純には言えないということ。

厚生労働省は室内空気中化学物質について指針値を定め、室内濃度の管理を進めています。一方で、環境省は屋外の大気についてPM2.5やベンゼンなどの環境基準を定めています。

つまり、室内にも室外にも、それぞれ別のリスクと管理の考え方があります。

こんにちは、京都市で住まいづくりを手掛ける「あまねこう」です。
この記事では、新築住宅の室内空気と室外の空気をどう考えればよいのかを、わかりやすく整理していきます。

結論

結論からいうと、

新築住宅の室内空気がいつも外よりきれい、とは限りませんし、室外の空気のほうがいつもきれい、とも限りません。

新築住宅の室内では、建材、接着剤、塗料、家具などから化学物質が放散される可能性があります。厚生労働省はホルムアルデヒドやトルエンなどについて室内濃度指針値を示し、シックハウス対策を進めています。

一方で、室外の空気にもPM2.5、ベンゼン、二酸化窒素などの汚染物質があり、環境省は大気汚染に係る環境基準を設けています。

2025年公表の令和5年度大気汚染状況では、PM2.5の環境基準達成率は高い一方で、屋外大気にも管理すべき汚染物質が存在することは変わりません。

つまり大切なのは、「室内か室外か」だけで決めることではなく、新築住宅の中で何が空気に影響し、どう換気し、どう暮らすかを考えることです。

新築住宅の室内空気が気になる理由

新築住宅の空気が不安に感じられるのは、きっと見えないものが多いからだと思います。家の中はきれいに見えても、空気の中に何があるかは目ではわかりません。

新築住宅では建材や家具から化学物質が出ることがある

厚生労働省は、シックハウス対策として室内空気中化学物質の指針値を公表しています。

対象にはホルムアルデヒド、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどが含まれています。これは、新築や改装後の住宅で建材や接着剤、塗料、家具などから化学物質が放散されることがあるためです。

つまり、新築住宅の室内空気が気になるのは、気のせいではありません。制度としても、そのリスクを前提に管理が進められています。

室内には規制されていない化学物質もある

ここで大切なのは、指針値がある物質だけ見ればよいわけではないことです。

厚生労働省はTVOCの暫定目標値についても示しており、個別のVOCだけでなく、総量として室内空気質を見る必要があるとしています。

また、TVOCには健康影響が懸念される物質ばかりが含まれるわけではない一方、指針値のない物質も室内には存在しうることがわかります。

つまり、「規制されている物質だけ気をつければ安心」とは言い切れません。新築住宅の室内空気では、まだ個別に強く意識されにくい化学物質も含めて、空気全体を考える視点が必要です。

※TVOC=総揮発性有機化合物
室内の建材、家具、塗料などから揮発する化学物質の合計量のこと

室外の空気のほうがきれいなのか

では、室内が気になるなら外の空気のほうがきれいなのでしょうか。ここも単純ではありません。

室外にも汚染物質はある

環境省は、屋外大気についてPM2.5、二酸化窒素、一酸化炭素、ベンゼンなどの環境基準を定めています。これは、室外の空気にも人の健康に影響しうる汚染物質があるからです。

たとえば、交通量の多い道路の近く、工場が近い場所、都市部の幹線道路沿いなどでは、外気の影響を受けやすいことがあります。

つまり、「外の空気=無条件できれい」という理解も正確ではありません。

ただし、新築直後は外のほうが楽に感じる人もいる

一方で、新築住宅の引き渡し直後などは、室内にこもるにおいや化学物質の影響で、外に出たほうが楽だと感じる人がいても不思議ではありません。

これは、建物の中に発生源が集中しているためです。

その意味では、「室外のほうがきれいかも」と感じること自体は十分ありえます。

とくに、新築直後で換気が不十分な場合や、家具・カーテン・家電などを一気に入れた場合には、室内負荷が高くなりやすいです。

厚生労働省やWHOも、室内空気汚染は屋内発生源の影響を強く受けることを前提にガイドラインを示しています。

室内空気と室外空気は、何が違うのか

新築住宅で考えたいのは、「どちらが上か下か」という比較だけではなく、室内と室外で汚染の性質が違うことです。

室内は「こもる」ことで問題が大きくなりやすい

室内空気の特徴は、発生したものがこもりやすいことです。

新築住宅では高気密化が進んでいるため、換気計画がうまく働かなかったり、生活の中で給気口を閉じたままにしていたりすると、室内発生源の影響が残りやすくなります。

厚生労働省が測定方法や指針値を詳細に示しているのも、室内では発生源の影響が局所的かつ継続的になりやすいからです。

室外は「広がる」が、別の汚染を持ち込むことがある

室外の空気は拡散しやすい一方で、地域環境の影響を受けます。交通、花粉、PM2.5、黄砂、工場排出、周辺の生活環境などに左右されるため、季節や立地によって質が変わります。

WHOも屋外大気汚染が健康に影響することを継続して示しています。

つまり、室内は「こもること」が問題になりやすく、室外は「外部由来の汚染を含むこと」が問題になりやすいという違いがあります。

新築住宅で本当に大切なのは「室内をどう整えるか」

ここまで見ると、室内も外も不安に感じるかもしれません。ですが、必要以上に怖がる必要はありません。大切なのは、住まいづくりの段階で空気の考え方を持っておくことです。

建材だけでなく、家具や生活用品も空気に影響する

新築住宅では、壁や床だけでなく、ソファ、カーテン、収納家具、ラグ、寝具なども室内空気に影響します。入居後ににおいが強く感じられる場合、建物本体だけが原因とは限りません。

そのため、空気環境を考えるなら、「家が完成したら終わり」ではなく、「入居後に何を持ち込むか」まで含めて見ていくことが大切です。

換気を前提に住まいを使うことが大切

室内空気中化学物質の管理では、換気が重要な要素です。

新築住宅では24時間換気が前提になっていることが多いですが、音や寒さが気になって止めたり、給気口を閉じたりすると、本来の性能が活かしにくくなります。

厚生労働省の測定マニュアルや指針値の運用も、適切な室内環境管理を前提にしています。

「新築だから安全」でも「新築だから危険」でもない

新築住宅の空気については、極端に考えないことが大切です。新築だから全部安全とも言えませんし、新築だから全部危険とも言えません。

大切なのは、どんな建材を選ぶか、どんな家具を入れるか、換気をどう使うか、入居直後にどう空気を抜くか、といった積み重ねです。空気のきれいさは、完成時点のラベルだけでは決まらず、住み方でも変わります。

まとめ

新築住宅の室内空気と室外の空気を比べたとき、どちらが絶対にきれいとは言い切れません。

室内には建材や家具由来の化学物質があり、厚生労働省は室内濃度指針値を示しています。一方で、室外にもPM2.5やベンゼンなどの汚染物質があり、環境省は大気の環境基準を定めています。

つまり、大切なのは「室内か室外か」で単純に決めることではなく、次のように考えることです。

  • 新築住宅の室内には、建材や家具由来の化学物質があることがある
  • 室内には、指針値のない化学物質も含めて考える視点が必要
  • 室外にもPM2.5や有害大気汚染物質があり、無条件で安全とは言えない
  • 新築直後は、室外のほうが楽だと感じることもありうる
  • 本当に大切なのは、換気と材料選び、暮らし方で室内空気を整えること

新築住宅を考えるときは、「外のほうがきれいかも」と不安になる気持ちを否定しなくて大丈夫です。そのうえで、室内をどう整えるかという視点を持つことが、安心して暮らせる家づくりにつながります。

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この記事を書いた人

中川 高士

中川 高士(あまねこう代表)

大手ハウスメーカーから地域ビルダー、小規模工務店まで30年以上の建築経験を持つ。

営業から現場管理まで一貫して携わり、現在は京都で自然素材を活かした住まいづくりを提案。

10年後に「この家でよかった」
と思える暮らしが増えることで、地域が豊かになることを目指す。

【保有資格・公的な役職】
・建築物石綿(アスベスト)含有建材調査者
・愛犬家住宅コーディネーター
・ホウ酸施工管理技士
・空気測定士
・向日市固定資産評価審査委員会委員

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