シックハウス症候群が気になって、「できるだけ自然素材の家にしたい」と考える方は多いと思います。

化学物質をなるべく避けたい、木の家なら空気がよさそう、と感じるのは自然なことだと思います。

ただ、ここで少しだけ立ち止まって考えたいことがあります。自然素材の家にはたしかに魅力がありますが、自然素材なら何でも安心、木の香りが強いほどよい、とは言い切れません。

厚生労働省はシックハウス対策として、ホルムアルデヒドなどの室内空気中化学物質について指針値や測定方法を示しており、問題は「自然か人工か」だけでなく、室内空気全体をどう整えるかにあります。

この記事では、シックハウス症候群と自然素材の家の関係をやさしく整理しながら、「自然素材」「木の香り」「化学物質」をどう考えればよいかをわかりやすくお伝えします。

シックハウス症候群と自然素材の家はどう考えればよいのか

シックハウス症候群という言葉を聞くと、どうしても

「化学物質が悪い」
「自然素材なら大丈夫」と単純に考えたくなります。

ですが、実際の住まいづくりではもう少し丁寧に見たほうが安心なんです。

大切なのは、自然素材かどうかだけではなく、

どんな材料を、どこに、どのくらい使い、換気や施工まで含めてどう整えるかです。

シックハウス症候群は化学物質だけを単純に避ければよい話ではない

厚生労働省は、シックハウス対策として室内空気中化学物質の指針値を示しています。

対象にはホルムアルデヒド、トルエン、キシレンなどが含まれており、室内空気の状態を総合的に見ていく考え方が基本です。

つまり、問題は「人工素材だから悪い」「自然素材だから安全」という二択ではなく、室内で何が放散され、どのように滞留するかです。

そのため、自然素材の家を考えるときも、イメージだけで安心しないことが大切です。

たとえば、自然素材を使っていても、接着剤、塗料、下地材、家具、カーテン、日用品などから別の化学物質が加わることがあります。

住まいの空気は、ひとつの材料だけで決まるわけではありません。

自然素材の家には魅力があるが、それだけで安心とは限らない

自然素材の家には、木の肌ざわりや調湿性、見た目のやわらかさなど、たしかに心地よい面があります。

林野庁の資料でも、木質空間や木の香りにはリラックスなどの効果が示された研究例があります。

ただし、同じ資料では、そうした効果は研究条件のもとで確認されたものであり、どの空間でも普遍的に得られるとは限らないとも明記されています。

つまり、木の空間に期待できることはあっても、それを過信しない姿勢が大切です。

自然素材も「化学物質を出さない」わけではない

ここは誤解されやすいところです。

木や精油の香り成分も化学物質です。化学物質という言葉は人工的なものだけを指すわけではありません。実際、木材の香りや樹木由来の精油にもさまざまな成分が含まれています。

だからこそ、自然素材の家を考えるときは、「化学物質ゼロの家」を目指すというより、刺激の少ない材料を選び、室内空気を悪化させにくい構成に整えるという考え方のほうが現実的です。

木の香りは心地よいこともあるが、強ければよいわけではない

木の家と聞くと、よい香りを想像する方は多いと思います。実際に、木の香りでほっとする方もたくさんいます。

けれども、ここにも少し注意したい点があります。木の香りは心地よいことがある一方で、強ければ強いほどよいとは限りません。

木の香りにはリラックスの研究例がある

林野庁の資料では、木材の匂いにストレス抑制やリラックスに関する研究例が紹介されています。

木の空間に安心感や癒やしを感じる人が多いのは、こうした背景とも無関係ではありません。

自然素材の家が好まれる理由のひとつに、こうした感覚的な心地よさがあるのは確かです。木の香りそのものを否定する必要はありません。

ただし、人によっては刺激や不快感になることもある

一方で、香りはとても個人差が大きいものです。

研究でも、においの強さ、快・不快度、刺激感といった主観評価が扱われており、木の香りが万人に同じように心地よいとは限りません。

特に、体調が不安定なとき、においに敏感なとき、シックハウス症候群の不安が強いときは、「よい香り」のはずのものが負担になることもあります。

ですので、木の香りはあるほうがよいではなく、自分や家族にとって強すぎないかで考えるほうが安心です。

「木の香りがする家」より「空気がつらくない家」が大事

住まいづくりで本当に大切なのは、印象の強い香りがあることではなく、長く過ごしても空気がつらくないことです。

最初に入った瞬間の香りのよさより、数時間いても頭が重くならないか、目やのどに違和感がないか、深呼吸しやすいかのほうが大切です。

自然素材の家を考えるなら、
「木の香りがする家」を目指すより、刺激が少なく、落ち着いて過ごせる空気環境を目指したほうが失敗しにくいと思います。

楠木のように香りの強い木は魅力もあるが、慎重に考えたい

楠木は香りに特徴がある木として知られています。好きな方にはとても魅力的で、自然素材らしさを感じやすい素材でもあります。

ただ、シックハウス症候群やにおいへの敏感さが気になる場合は、香りの強い木ほど慎重に考えたほうが安心です。

楠木からつくられる樟脳は昔から利用されてきた

林野庁の資料では、クスノキを蒸留してつくる樟脳が、防虫剤、医薬品、香料などとして古くから使われてきたことが紹介されています。つまり、楠木は香り成分に特徴のある木です。

この個性が、楠木らしい魅力でもあります。ですが、香りに特徴があるということは、感じ方にも差が出やすいということでもあります。

香りの強い木は、好き嫌いや相性が分かれやすい

楠木に限らず、香りの個性が強い素材は、「すごく好き」と感じる人もいれば、「少し強い」「長時間だとつらい」と感じる人もいます。

特に、小さなお子さん、においに敏感な方、体調によって刺激を感じやすい方がいる家庭では、最初の印象だけで決めないほうが安心です。

厚生労働省の職場のあんぜんサイトでは、しょう脳について健康有害性の情報も示されています。

住宅用木材そのものと工業的な化学物質情報を同一視はできませんが、少なくとも「天然由来だから刺激がない」と単純には言えません。

楠木を使うなら「少量」「部分使い」「体感確認」が安心

楠木のような香りの強い木を使いたい場合は、家全体に多用するより、まずは部分使いで検討するほうが安心です。

玄関まわり、家具、建具の一部など、使い方を絞るだけでも印象は大きく変わります。

また、サンプルだけで判断せず、できれば実際の空間で香りの強さを確かめることが大切です。

自然素材は、カタログで見る印象と、空間の中で感じる印象がかなり違うことがあります。

自然素材の家で大切なのは「自然素材を選ぶこと」より「空気を整えること」

ここまで見ると、自然素材の家はよくないのかと思われるかもしれません。

ですが、そうではありません。やはり自然素材の家には大きな魅力があります。

ただ、その魅力を活かすには、自然素材を選んだこと自体に安心しすぎないことが大切です。

素材だけでなく、接着剤や塗料、施工まで見たい

家の空気環境は、無垢材や漆喰だけで決まるわけではありません。

見えないところの接着剤、塗料、下地材、断熱材、造作家具なども影響します。

厚生労働省のシックハウス対策が、特定物質の指針値や標準的測定方法まで示しているのは、空気環境を総合的に見る必要があるからです。

自然素材の家を考えるなら、「何の木を使うか」だけでなく、「見えない部分に何を使うか」まで確認したいところです。

換気と空気の流れを無視できない

どんなに自然素材にこだわっても、換気が不十分なら空気はこもりやすくなります。室内空気中化学物質の測定や指針値が重視されるのも、放散された成分が空間に残り続けるかどうかが重要だからです。

つまり、自然素材の家づくりでは、素材のやさしさと同じくらい、換気計画や空気の流れも大切です。ここが整っていないと、素材のよさも生きにくくなります。

「自然素材の家」より「自分たちに合う家」を目指したい

住まいづくりでは、言葉の印象が先に立ちやすいです。

「自然素材の家」という響きはとても魅力的ですが、本当に大切なのは、その家が自分たちに合っているかどうかです。

木の香りが強いほうが落ち着く人もいれば、ほとんど香りがないほうが安心できる人もいます。

無垢材が心地よい人もいれば、まずは刺激の少なさを優先したい人もいます。正解をひとつに決めつけず、体感しながら調整していく姿勢が大切です。

まとめ|自然素材の家での注意点とは

シックハウス症候群が気になると、自然素材の家に安心を求めたくなります。実際に、自然素材には魅力があり、木の空間に心地よさを感じる方も多いです。木の香りにリラックスの研究例があることも事実です。

ただし、自然素材なら何でも安心、木の香りが強いほどよい、とは言い切れません。

木や精油の香り成分も化学物質であり、感じ方には個人差があります。楠木のように香りの個性が強い木は、魅力がある一方で、敏感な方には慎重な見極めが必要です。

大切なのは、次のような視点です。

  • シックハウス症候群は、自然か人工かだけで単純に決まるものではない
  • 自然素材の家にも魅力はあるが、それだけで安心とは限らない
  • 木の香りは心地よいこともあるが、強ければよいわけではない
  • 楠木のように香りの強い木は、相性を見ながら使い方を考えたい
  • 本当に大切なのは、素材だけでなく室内空気全体を整えること

自然素材の家を考えるときは、「自然素材だから大丈夫」と急いで決めず、自分たちにとって刺激が少なく、落ち着いて暮らせるかを大切にしてみてください。

それが、後悔しにくい住まいづくりにつながります。

住まいづくりを整理する無料資料
「いえのもと」

情報が多すぎて迷いませんか?

「どんな家を建てるか」より、
まずは「どんな暮らしをしたいか」。

そんな考え方を整理するための
無料資料セットです。

京都市で家を建てるなら
地元の工務店へ

京都での家づくりには、少し気をつけておきたい地域特有の事情があります。

たとえば「景観条例」に代表される独自のルールや、道幅が狭く土地の形が複雑な場所が多いことなど、他の地域とは少し異なる条件があるためです。

そうした背景をふまえると、地元での経験が豊富で、京都の家づくりに慣れている工務店を選ぶことが、安心につながるポイントになってきます。

土地や法規制に合わせたご提案や、現場でのスムーズな対応など、地域をよく知る工務店だからこそできることがあります。

あまねこう代表のプロフィール

この記事を書いた人

中川 高士

中川 高士(あまねこう代表)

大手ハウスメーカーから地域ビルダー、小規模工務店まで30年以上の建築経験を持つ。

営業から現場管理まで一貫して携わり、現在は京都で自然素材を活かした住まいづくりを提案。

10年後に「この家でよかった」
と思える暮らしが増えることで、地域が豊かになることを目指す。

【保有資格等】
・建築物石綿(アスベスト)含有建材調査者
・愛犬家住宅コーディネーター
・ホウ酸施工管理技士
・空気測定士
・向日市固定資産税評価委員会委員

住まいづくりで悩む方へ

「何を基準に考えればいいかわからない」

そんなときは、一緒に整理してみませんか。

お気軽にご相談ください。