みなさんこんにちは。
京都市で住まいづくりを手掛ける「あまねこう」の中川です。

木の香りは体にいいのか?
最初に結論から書くと、木の香りには、人がリラックスする反応を示した研究があります。

しかし、

「木の香りだから身体にいい」
「天然の香りだから安全」

とまでは単純に言えません。

ヒノキなどの木から感じる香りも、α-ピネンやリモネンといった揮発性有機化合物(VOC)によってつくられています。

要するに、木の香りも「化学物質」です。

だから木の香りが悪い、という話ではありません。

今回お伝えしたいのは、「天然だから良い」「化学物質だから悪い」という分け方だけでは、住まいの空気は考えられないということです。

少し難しいかもしれませんがお付き合いください。

木の香りを「化学物質」として実感した経験

アレルギーと住宅を考える会、での資料の1つ

以前、「アレルギーと住宅の関連を考える」という主旨の会合に参加したことがあります。

その時、α-ピネンとリモネンという学物質のそれぞれの香りを実際に嗅ぐ機会がありました。

α-ピネンを嗅いだ瞬間、

「ああ、この匂いがα-ピネンなんだ!」

と、すぐに分かりました。リモネンも同じです。

普段は「木の香り」「自然の香り」とひとまとめにして感じていますが、一つの成分だけを嗅いでみると、

「普段感じている香りには、こういう物質が含まれているんだ」と、とても分かりやすかったのを覚えています。

この経験から中川の中では、

自然の香りと化学物質は、反対のものではない

ということを、より実感するようになりました。

ヒノキの香りの正体は揮発性有機化合物(VOC)

ヒノキの柱を積んでいる様子

ヒノキの香りは、「木の匂い」という名の一つの物質のみ出ているわけではありません。

木から複数の香り成分が空気中へ放散され、それらを私たちの鼻が感じています。

その代表的な成分の一つがα-ピネンです。
(難しいので覚えなくて良いです)

分子式で書くと、

α-ピネン C₁₀H₁₆

です。

そして、柑橘系の香りでも知られているリモネンも、

リモネン C₁₀H₁₆

です。

面白いことに分子式は同じですが、分子の構造が違うため、感じる香りも違うんです。

普段「木のいい香り」と感覚的に捉えているものも、化学の目で見れば、こうしたさまざまな物質の組み合わせなわけなんです。

天然の木から出る香りも化学物質

化学式をイメージさせる画像

「化学物質」という言葉を聞くと、

人工的につくられたもの。
工場でつくられたもの。
身体に悪そうなもの。

そんなイメージを持つ方もいると思います。

でも、化学物質という言葉そのものに「人工物」という意味はありません。

水はH₂O。
酸素はO₂。
α-ピネンはC₁₀H₁₆。

自然界にあるものも、さまざまな化学物質によってできています。

ですから、

天然=化学物質ではない

という考え方は正しくありません。

同じように、

化学物質=身体に悪い

ということでもありません。

大切なのは、その物質が何で、どんな性質を持っているのかを見ることだと思います。

ヒノキチオール C₁₀H₁₂O₂も天然由来の有機化合物

森の中のイメージ

ここで少し余談です。

「ヒノキチオール」という言葉なら、聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。

歯磨き剤や化粧品などで「ヒノキチオール配合」と書かれていることもあります。

ヒノキチオールの分子式は、

C₁₀H₁₂O₂

です。

天然由来の物質ですが、化学的にはトロポロン骨格を持つ芳香族有機化合物です。

名前に「ヒノキ」と付いていますが、日本のヒノキの香りの主成分ではありません。

この話も、

「天然のものにも、きちんと分子式があり、化学物質として説明できる」

という一つの例です。自然と化学は、決して別々の世界ではないということを知っておいてもらいたいなと思います。

木の香りにはリラックス効果がある?

自然素材仕上げの部屋で、安全な無垢材のおもちゃと戯れる子供

では、木の香りは身体にいいのでしょうか。

α-ピネンなど木材由来の香り成分については、人が香りを嗅いだときに副交感神経活動が高まり、心拍数が低下するなど、生理的なリラックス反応を示した研究があります。

ですから、

木の香りにリラックス効果を示した研究がある

というのは間違いではありません。

ただし、

「だからヒノキの香りは誰にでも健康にいい」

とまで言い切れない場合があるので要注意です。

香りの感じ方には個人差があります。木の香りを心地よく感じる人もいれば、強い香りを苦手に感じる人もいます。

「リラックス反応を示した研究がある」ということと、「天然の香りなら誰にでも身体にいい」ということは、分けて考えましょう。

自然素材の家でもVOCは存在する

びっくりしている女性

住宅でVOC(揮発性有機化合物)という言葉を聞くと、接着剤や塗料などから放散される化学物質を思い浮かべる方が多いと思います。

しかし、VOCは人工的な建材からだけ出るものではありません。

木材そのものからも、α-ピネンやリモネンなどの揮発性有機化合物が放散されます。

つまり、

自然素材の家=VOCがない家

ではありません。だからといって、

木材からVOCが出る=木の家は危険

という話でもありません。

「VOC」という言葉だけを見て、良い・悪いを判断すること自体が少し違うということです。

自然素材を使うからこそ「天然だから安心」で終わらせない

壁は漆喰、床と天井は無垢材で背上げた寝室

あまねこうでは、自然素材を多く使った住まいづくりをしています。

中川は、

「自然素材だから安全です」

という一言だけで説明を終わらせないように

木の香りも化学物質です。

その中には、人が心地よいと感じたり、生理的なリラックス反応を示したりする成分もあります。

一方で、香りに敏感な人もいます。

大切なのは、

天然か人工かではなく、何という物質なのか。
どんな性質があるのか。
そして、そこで暮らす人がどう感じるのか。

ということだと思います。中川自身も、ヒノキをはじめ木の香りは好きです。

ただ、

「自然だから身体にいい」のではなく、「自然なものも化学として見る」。

自然素材を使った家づくりをしているからこそ、そんな視点も持ちながら室内の空気を考えていきたいなぁと思っています。

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この記事を書いた人

中川 高士

中川 高士(あまねこう代表)

大手ハウスメーカーから地域ビルダー、小規模工務店まで30年以上の建築経験を持つ。

営業から現場管理まで一貫して携わり、現在は京都で自然素材を活かした住まいづくりを提案。

10年後に「この家でよかった」
と思える暮らしが増えることで、地域が豊かになることを目指す。

【保有資格・公的な役職】
・建築物石綿(アスベスト)含有建材調査者
・愛犬家住宅コーディネーター
・ホウ酸施工管理技士
・空気測定士
・向日市固定資産評価審査委員会委員

保有資格と住まいづくりへの活かし方を見る →

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