この夏、エアコンが壊れてわかった大切なこと|夏すずしく、冬暖かい家の基本とは

 京都市西京区で注文住宅、リノベーションを手がける「あまねこう」の中川です。実は3週間ほど前に自宅の寝室のエアコンが壊れました。この猛暑の中、冷房がないのはとてもキツイです。家族はそれぞれの部屋で寝るので問題ありません。私だけが困っています。

 諸事情があり、エアコンを買うかどうか検討中です。リビングで寝ても背中と腰が痛くて寝れません。そんなわけで窓を24時間全開、部屋にいる間は扇風機を使用しています。このことで今更ながら住まいづくりにおいてとても大切なことを体感いたしました。

▶︎パッシブデザインという省エネ設計の効用

 日中はとても暑いです。37℃を超える猛暑が続いています。この時にエアコンのない室内はどうなるのか。

 就寝の際、部屋はとても暑いのですが、この数日、体感的に気づいた重要なことあります。それは輻射熱です。実は室内の温度はそうでもないのです。明らかに壁、天井、家具、その他の室内のありとあらゆるものが身体に向かって熱を浴びせてきます。

 夏の車で例えるなら、エアコンをガンガン使用していても、シートとダッシュボードの熱がそのまま暑さに変わるアレです。

 ところが夜半を過ぎるとあきらかに外気と同じ温度になっています。涼しいのです。エアコン無しで寝れるのです。

結論は「猛暑なのに夜はエアコンなしで涼しく寝れる」ということ。

 少し難しい話をしますが、建材や物にはそれぞれに容積比熱があるわけです。我が家の内装壁の仕上げ材と直下の下地材はビニルクロスと石膏ボード。容積比熱はまあまあ低い。それでも夜半からは快適に過ごせるのは、

木造住宅であること
パッシブデザインの要素がある、ということ

この二つが大きいのだと推測しています。これ何も考えずに作った家だと、夜になっても外気温以上の室温になり、高断熱が仇となってとても暑い家になるんですね。エアコンで冷やすにしてもとてもたくさんのエネルギーを消費します。省エネではありません。

▶︎パッシブデザインと容積比熱を考えてもっと快適に過ごせる

 熱の伝導には熱伝導率、熱貫流率、熱抵抗、容積比熱、その他たくさんの視点があります。しかし端的に書けば

人間が快適だと感じる範囲の熱の「値」を持つもので造り、仕上げてあげればハードしては最高になる、ということです。

 さらにパッシブデザインとは、太陽の位置や住まいとの関係を計算し、エアコンなど空調のない状態で、快適な環境を作り出す設計手法です。家の基本性能を高めた省エネ住宅だとご理解ください。

 あまねこうでは、冬は無暖房で夜12時に20℃の室温が朝6時には15℃を下回らないこと。夏は無冷房で外気温を超えないこと。こう考えています。

 ただし、どんなにパッシブデザインでうまく設計しても前述のように内装など容積比熱数値が低いもので家を仕上げると、せっかくのパッシブデザインは役に立ちません。結論を先に書けば

自然素材が良い、と数値的にもはっきりします

石膏ボード(9.5mm)の容積比熱は 830 J /(L・K)
漆喰(しっくい)の容積比熱は 1400 J /(L・K)

 石膏ボードの方が約1.6倍も「熱しやすく冷めにくい」のです。夏、一旦熱が室内に篭ると、エアコンをつけたとしても冷めにくい。
(室温は下がるのですが、輻射熱で暑い、という体感になる)。

 我が家の寝室も内装が漆喰だったらなぁ…と妄想しています。この猛暑とエアコンの故障のおかげで、省エネ住宅の基本に気付けました。怪我の功名ですね。

この記事を書いた人

中川 高士:あまねこう代表

営業から現場管理までこなす建築マルチプレーヤー。実家は工務店。幼少より建築に触れながら育つ。大手ハウスメーカー、地域ビルダー、社員一人の工務店まで経験。営業マンからスタートし、それぞれの企業で事業マネジメントまで行う。2023年に独立。「愛犬家住宅コーディネーター」「ホウ酸施工管理技士」「空気測定士」など暮らしスタイルに必要な資格を活かし「家」ではなく「住まいづくり」というサービスの提供に力を入れている。