シロアリ対策というと、「5年ごとに薬剤を再施工するもの」というイメージを持つ人が多いのではないでしょうか。

しかし、ホウ酸を使った防蟻処理はその常識を覆す方法なんです。

なぜホウ酸は一度の施工で長く効果を発揮できるのか。その理由を、自然素材の家づくりと結びつけながら解説します。

ホウ酸は『揮発しない』鉱物成分

ホウ酸は自然界に存在する鉱物で、温度や湿度の変化でも性質が変わらない安定した物質です。

一般的な防蟻薬剤は揮発性があり、空気中に拡散することで虫を寄せつけない効果を発揮しますが、時間とともに分解し、数年で効果が薄れてしまいます。

一方、ホウ酸は蒸発も分解もしないため、木材の内部に長くとどまり続けます。

つまり、一度しっかりと含浸させれば効果は半永久的。再施工の必要がないという特徴は、この「揮発しない」鉱物としての安定性にあります。

シロアリが自ら口にして効くメカニズム

薬剤処理では、虫が薬剤に触れることではじめて効果が出ます。しかしホウ酸は、虫が木材をかじることで体内に取り込み、代謝を止めて駆除する仕組みです。

シロアリは「トロファラクシス」と呼ばれる習性を持ち、巣の仲間同士で餌を分け合います。そのため、ホウ酸を食べた一匹から巣全体へと効果が広がり、単なる侵入防止ではなく「巣ごと駆除」に近い効果ももたらします。

これが、ホウ酸が「再施工不要」といわれるもう一つの理由です。

効果が長持ち=家全体のコストダウン

薬剤処理では、3〜5年ごとに再施工が必要になり、そのたびに費用が発生します。

しかも薬剤が建物の内部に浸透しにくいため、処理のムラができやすいという課題もあります。

ホウ酸は一度の施工で木材内部までしっかりと浸透し、長期的に効果を発揮します。そのため、再施工費用やメンテナンスの手間を省くことができ、結果的に家全体の維持コストを抑えることにつながります。

京都のように湿度が高く、シロアリ被害が起こりやすい地域では、特にその効果が実感しやすいでしょう。

構造材を“守る”という視点

防蟻処理というと「虫を防ぐ」イメージが強いですが、本来の目的は「木を守る」ことにあります。

ホウ酸は防蟻だけでなく、防腐・防カビ効果も併せ持ち、構造材を湿気や菌から守ります。つまり、防蟻処理を行うことで、家の骨組みそのものの寿命を延ばすことができるのです。

構造がしっかりしていれば、内装や設備をリフォームしても家全体の耐久性を維持できます。家を“長持ちさせる基礎”をつくる――それがホウ酸処理の本当の価値です。

自然素材の家との相性の良さ

ホウ酸は化学的に安定しており、無垢材や漆喰といった自然素材との相性も抜群です。

揮発しないため、室内の空気を汚さず、呼吸する素材の性能を損なうこともありません。小さなこどもやペットがいる家庭でも安心して採用できます。

自然素材でつくる家は、「見えない部分まで自然素材で仕上げる」ことが理想です。構造材の防蟻処理にもホウ酸を選ぶことで、真に“無添加の家づくり”が実現します。

まとめ

ホウ酸処理が“再施工不要”といわれるのは、鉱物としての安定性と、シロアリの習性を利用した働きによるものです。時間が経っても効果が変わらず、化学薬剤のような再施工や空気汚染の心配もありません。

防蟻処理の考え方を、「短期的に効かせる」から「長く守る」へ。自然のチカラを活かしたホウ酸処理は、これからの家づくりに欠かせない“新常識”です。

【参照先及び出展先】
シロアリは「トロファラクシス」と呼ばれる、仲間同士で餌や消化物を分け合う習性があります。この行動により、ホウ酸を摂取した個体から巣全体に有効成分が広がり、群全体で効果を発揮します※。

※出典:U.S. Department of Agriculture, Forest Service, “Termite biology and behavior”, Research Paper FPL-RP-644, 2008.
https://www.fpl.fs.usda.gov/documnts/pdf2008/fpl_2008_green002.pdf


また、ホウ酸塩には白蟻の摂食を抑制し、腸内の共生原生生物を破壊して消化を妨げる作用も確認されています※。このため、摂取した個体は代謝を維持できずに死に至ります。

※参照:Grace, J.K. & Yates, J.R. (2002). “The response of the Formosan subterranean termite to different boron compounds.” University of Hawaii, Department of Entomology.
https://www.ctahr.hawaii.edu/gracek/pdfs/232.pdf

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あまねこう代表のプロフィール

この記事を書いた人

中川 高士

京都産業大学卒業。
2024年、京都府向日市より「向日市固定資産税評価委員会」委員を拝命。

実家が工務店という環境で育ち、幼少期から建築の世界に親しむ。
大手ハウスメーカー、地域ビルダー、そして社員一人の小規模工務店まで、28年以上にわたり幅広い建築会社で経験を積む。
営業職からスタートし、各社で現場管理・事業マネジメントまでを担い、建築の全体像を深く理解するに至った。

2023年に独立し、現在は「営業から現場管理までこなす建築マルチプレーヤー」として活動中。

【保有資格等】
・建築物石綿(アスベスト)含有建材調査者
・愛犬家住宅コーディネーター
・ホウ酸施工管理技士
・空気測定士
・向日市固定資産税評価委員会委員

「家を建てる」だけでなく「暮らしをつくる」ことを大切に、自然素材を活かした住まいづくりを提案している。

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