耐震性能を高める時に見落としがちなこと|注文住宅でもリノベーションでも大切なポイントを解説します

 京都市で注文住宅・リノベーション工事を手がける工務店「あまねこう」の中川です。注文住宅でもリノベーションでも、大きな工事の際は耐震性能が心配になったり、性能を高めたい、と考えると思います。そんな耐震性能の向上を考えるときに、よく見落とすポイントを解説します。

目次

このブログのポイント

・耐震性能とは具体的には一体なんでしょうか。プロでもすぐに答えられる人が少ない質問です。

・耐震性能は何のために高めるのか考えてみましょう。

・耐震設計、耐震工事に合わせてやるべきこととは。

耐震性能とは一体なんでしょうか

 耐震性能、耐震設計、他には耐震等級という言葉があります。しかしそれが何かを聞かれた時に、みなさんは答えられるでしょうか。実はプロでもちゃんと答えられない質問です。解説していきます。

耐震性能とは

 まず耐震性能とは、法律で想定している地震が発生した際に「倒壊しない」ということを言います。「命を守る」という前提ですので「倒壊しない」「避難ができる」ということを想定しているわけです。

 耐震等級とは、法律上想定している地震の影響を3段階に分けています。等級3が最大で、等級1を基準とした場合、等級2はその1.25倍。等級3は等級1の1.5倍の力に耐えられると定められています。

 耐震等級別に「倒壊」と「損壊」という言葉の基準が変わります。しかしいずれにしても「倒壊しない」ということは、言い換えると「大地震に一度だけ耐える」ということ。長きに渡り地震に対して有効な性能ではないということです。

耐震性能に対する誤解

 さらによく誤解があるのが「地震の力=震度」ではないということです。耐震等級3は「震度×1.5倍」ではありません。地震が発生した際にはニュースなどでは「震度」で表現されることが多いので、間違って覚えている人が多いので注意が必要です。

 また、耐震や耐震等級という言葉は建築基準法には出てきません。これらの語句は「品格法」という法律で用いられ、制定されているのですが建築士でも知らない人がいたりします。

耐震性能を高める

 耐震性能は高い方がいいと思います。しかし一体何のために性能を高めるのでしょうか。紐解いていきましょう。

地震から命を守る

 建築基準法の基本は地震から命や財産を守るということです。簡単に言えば来る地震から身を守る、ということ。地震は怖いですから耐震性能を高めることは当然の検討だと言えます。しかし、「一度だけ大地震に耐える」ことに安心できるでしょうか。

地震に対して長期間備えたい

 地震に対して長期間備えたい。長く安心に暮らしたい、これが本音だと思います。この本音と法律で定めている耐震性能とは乖離していますので注意すべきポイントです。

 長期間備えたいのなら、数回の地震に耐えられるかどうか、という検討が必要です。

耐震設計、耐震工事の際に見落とすこと

 耐震設計を行う際、前述のようなことを検討し、免震や制震を検討、採用する人もいらっしゃると思います。しかし、ここで見落とすことを紹介いたします。

耐震性能を長期間保持する

 極端な話なのですが、耐震性能は、建ってすぐが一番性能が高いわけです。環境などに左右されますが徐々に最初の性能から下がっていきます。長期間耐震性能を保持したいと考える際は、耐震、免震、制震、という工法だけではなく「耐久性」を両輪で考えなければなりません。

耐久性と耐震性能の関係

 耐震性能を高めるため「面材耐力壁」を採用している住宅会社がたくさんあります。面材というのは壁のこと。壁を建物の外周に貼ることで家を「箱」にして、耐震性能を高めるのです。

 この方法だと耐震性能や耐震等級は高くなるのですが、耐久性が落ちる、という事実があります。要するに「面材=壁」が邪魔をして壁の中の湿気を外へ追い出せなくなるのです。湿気を通してくれる面材もあるので、面材による耐震設計の際は面材の種類を必ず確認しましょう。

 湿気を通してくれる面材は高価です。耐震性能を面材に頼りなおかつ安価な建築費用である、ということは面材による耐久性の心配を払拭する必要があります。

防蟻処理と耐震性能

 そして必ずと言っていいほど、耐震性能を絡めた話がされないのが防蟻処理です。要するにシロアリ。少しでもシロアリ被害が発生した場合は、耐震性能などほとんどなくなってしまうと覚えておいてください。

 さらにシロアリ(防蟻工事)に関して、「薬剤処理をして5年は大丈夫です」とか「5年ごとに薬剤処理をしましょう」などと説明されるケースがとても多いのですが、耐震性能を考えるなら、そんなに簡単な話ではありません。

 構造躯体全体に絡む話なので、防蟻処理と耐震性能をしっかりと結びつけてお話のできる工務店や住宅会社を選ぶようにすると、より安心だと思います。

まとめ|耐震性能を高める時に見落とすこと

 耐震性能を考える際、耐震工法のこと、耐震等級、その他様々なことを説明されると思います。重要なのは「長持ちしてこそ」の耐震性能であることです。

長期で耐震性能を考える

 耐震性能を高めるために耐久性をわざわざ下げるような工法を採用している住宅会社も存在します。この矛盾を知らないユーザーは住宅会社の言うままに建てることになるので注意が必要です。

 そういったことをどこで勉強したり学んだりしたら良いのか。あまねこうのブログではこのような住まいづくりの情報を幅広く発信しています。ぜひご活用いただき、よりよい住まいづくりを行っていただきたいと思います。

京都市で家を建てるなら地元の工務店へ

 京都市で家を建てる場合、注文住宅でもリノベーションでも、道の幅がさほど広くない、隣家との間がほとんど空いていないなど、京都市独特の環境問題が存在しています。

 間口の狭い住まいでの耐震補強や耐震設計などの対応が必要です。

 地元での経験が長く、工事経験の豊富な工務店を選ぶことは皆さんの大きな安心へとつながることと思います。

あまねこう代表のプロフィール

この記事を書いた人

中川 高士:あまねこう代表

営業から現場管理までこなす建築マルチプレーヤー。実家は工務店。幼少より建築に触れながら育つ。大手ハウスメーカー、地域ビルダー、社員一人の工務店まで経験。営業マンからスタートし、それぞれの企業で事業マネジメントまで行う。2023年に独立。「愛犬家住宅コーディネーター」「ホウ酸施工管理技士」「空気測定士」など暮らしスタイルに必要な資格を活かし「家」ではなく「住まいづくり」というサービスの提供に力を入れている。