高断熱住宅なのになぜ夏は暑くなるの? あまねこうが解説します

 京都市西京区で注文住宅、リノベーションを手がける「あまねこう」の中川です。先日、知人からの相談、というか愚痴のお話。数ヶ月前に新築を建て、しかもかなりの高性能住宅。高気密高断熱で、省エネ等級6。快適に住んでいる、と思っていた矢先の相談です。

▶︎高断熱だから涼しい、という間違い

 高断熱住宅なので、夏涼しく冬は暖かい。そう思っていたとのこと。住宅会社からもそのように聞いていたので信じていたそうです。なのに、日中15時を過ぎると部屋の中はおそらく40℃を超えている、と。リビングなど人が居るスペースはエアコンを動かしているけど、2階には暑くて居られない。

 夜寝る時や部屋に篭りたい時、部屋に入るととても暑く、エアコンで冷やすまで入れない。室温が下がってもなぜか暑く感じる。「なぜ??」という疑問を強く抱いた様子です。

 色々質問していくつかわかったことがあります。例えば、「庇はない」「西陽が強く指す」「複合フローリング」「天井がとても高い」などなど。

 これははっきり言うと「失敗」の典型でした。いまだに、断熱工事をしっかり行えば冬は暖かく夏は涼しい、と考えている方がとても多いと感じます。怖いのはそのように説明する住宅会社が多いことです。

夏日:外気温37℃の外に置いた無垢フローリング「28℃」

夏日:外気温37℃の外に置いた複合フローリング「37.5

℃」

▶︎断熱の内容を正しく理解しましょう

 夏ではなく、冬で考えるとわかりやすいです。冬の寒い日を想像してください。外気温が0℃の寒い日です。暖房を利用する。するとほんの少しのエネルギーで家はすぐ温まり暖かくなる。高断熱住宅のすごいところです。

 しかしこの家、少しのエネルギーで暖かさを保つことのできる家なわけです。夏の暑い日。猛暑です。少しのエネルギーで暖かくなりそれを保つ家ですから、夏の暑いというエネルギーを一旦溜め込んでしまうと熱の逃げ場がなくなるわけです。
(かなり端的に書いています)

 さらに使用する建材。熱を溜め込みやすいもので仕上げていたり、そういったものが多い家だと、溜め込んだ熱を放射します(輻射熱)。ですからとても暑くなるわけです。

 そしてこういう家は、家の中の暑い空間をエアコンで冷やすことになるので、ものすごいエネルギーを必要とします。全然省エネ住宅ではないんですね。

 一旦冷えてしまえば、それを保つのには優れた住宅でしょうが、熱を溜め込みやすく冷めにくい家、なわけです。

 結果を先に書くと、涼しくなる理屈や体感を重視して設計することが先決です。断熱工事はその次です。断熱は、暖かく涼しい家の設計を補助するもの、と考えても大袈裟ではないと思います。

 涼しい家を建てたいならどうするか。暑さを感じさせない設計とは何か。暑さを感じさせない構造とは何か。暑さを感じさせない仕上げ材とは何か。それらを検討した後に、断熱に意識を向けるのが良いと思います。

 住まいづくりを失敗しないように、しっかりとかつ正しい情報収集ができるよう願っています。

この記事を書いた人

中川 高士:あまねこう代表

営業から現場管理までこなす建築マルチプレーヤー。実家は工務店。幼少より建築に触れながら育つ。大手ハウスメーカー、地域ビルダー、社員一人の工務店まで経験。営業マンからスタートし、それぞれの企業で事業マネジメントまで行う。2023年に独立。「愛犬家住宅コーディネーター」「ホウ酸施工管理技士」「空気測定士」など暮らしスタイルに必要な資格を活かし「家」ではなく「住まいづくり」というサービスの提供に力を入れている。