
「防蟻処理」と聞いて、「ホウ酸」と「薬剤」の違いをすぐに説明できる人は、実はあまり多くありません。
どちらも“虫を防ぐ”ことには変わりませんが、その仕組みや安全性はまったく異なります。自然素材の家を建てるなら、こうした“見えない安全性”こそ理解しておくことが大切です。
ホウ酸と薬剤、いちばんの違いは“化学的な作用”

一般的な薬剤処理は、神経毒性を持つ化学物質を使い、シロアリなどの虫を麻痺させて駆除します。薬剤は気化や揮発によって効果を発揮しますが、その反面、人の健康への影響や、数年後の効果減少が課題です。
一方、ホウ酸は自然界に存在する鉱物成分。
人や動物にとっては栄養素の一部でもあり、毒性は極めて低いのが特徴です。虫がホウ酸を体内に取り込むと代謝が止まり、結果的に死に至ります。化学反応ではなく、昆虫の生理的な仕組みを利用した、いわば“生態に基づく防蟻方法”なのです。
また、ホウ酸は揮発しません。つまり空気中に広がることがなく、室内の空気を汚さない――これが「薬剤と大きく違う安心のポイント」です。
防蟻効果の持続期間がまったく違う
薬剤による防蟻処理は、施工直後は高い効果を発揮しますが、薬剤が分解・揮発していくため、3〜5年ほどで効力が薄れます。
再施工が必要になるたびに数十万円の費用と手間がかかるのが一般的です。
一方、ホウ酸は鉱物であり、時間とともに変化しません。
土台や柱に含浸したホウ酸はそのままの状態で残り、長期間にわたって効果を持続します。つまり再施工が不要。一度の施工で家全体を長く守ることができるため、長期的にはコスト面でも大きなメリットがあります。
京都のように湿気が多く、白アリ被害が起こりやすい地域では、「効果が長く続くこと」が非常に重要です。地元の気候に合った防蟻方法として、ホウ酸は理にかなった選択と言えます。
人体への影響の有無

薬剤による防蟻処理では、微量ながら化学物質が空気中に残留することがあります。特に小さな子どもやペットがいる家庭では、その影響を気にする方も多いでしょう。
ホウ酸は、人間や哺乳類が摂取してもすぐに代謝されるため、体内に蓄積しません。
世界的にも食品添加物や医薬品に使われているほど安全性が高く、住宅に使う場合も人体への影響はほぼゼロ。自然素材の家や、化学物質を避けたい方には最適な防蟻方法です。
自然素材の家づくりとの相性

自然素材の家は、「呼吸する素材」でできています。
無垢の木や漆喰の壁は、湿度を吸ったり吐いたりしながら快適な空気環境を保ちます。そんな素材たちに化学薬剤を使うと、せっかくの調湿機能が損なわれることがあります。
ホウ酸は化学的に安定しており、無垢材や漆喰とも相性が抜群です。
素材そのものの性能を活かしたまま、防蟻・防腐・防カビの効果を発揮します。つまり、「防蟻処理も自然素材の一部として考える」――これが本当の意味での無添加住宅の考え方です。
まとめ
ホウ酸と薬剤の違いは、効果の強弱ではなく“性質の違い”です。
そもそも薬剤は殺虫剤。ホウ酸は殺虫剤ではありません。
そしてなにより、人に優しく、空気を汚さず、自然素材の性能を損なわないという大きな安心があります。
家を長く、健康的に守るためには、短期的な効果よりも持続性と安全性を重視すること。
「防蟻=薬剤」という常識を見直し、自然の力で家を守るという選択を考えてみてください。
京都市で家を建てるなら地元の工務店へ
京都での家づくりには、少し気をつけておきたい地域特有の事情があります。
たとえば「景観条例」に代表される独自のルールや、道幅が狭く土地の形が複雑な場所が多いことなど、他の地域とは少し異なる条件があるためです。
そうした背景をふまえると、地元での経験が豊富で、京都の家づくりに慣れている工務店を選ぶことが、安心につながるポイントになってきます。
土地や法規制に合わせたご提案や、現場でのスムーズな対応など、地域をよく知る工務店だからこそできることがあります。
この記事を書いた人

中川 高士
京都産業大学卒業。
2024年、京都府向日市より「向日市固定資産税評価委員会」委員を拝命。
実家が工務店という環境で育ち、幼少期から建築の世界に親しむ。
大手ハウスメーカー、地域ビルダー、そして社員一人の小規模工務店まで、28年以上にわたり幅広い建築会社で経験を積む。
営業職からスタートし、各社で現場管理・事業マネジメントまでを担い、建築の全体像を深く理解するに至った。
2023年に独立し、現在は「営業から現場管理までこなす建築マルチプレーヤー」として活動中。
【保有資格等】
・建築物石綿(アスベスト)含有建材調査者
・愛犬家住宅コーディネーター
・ホウ酸施工管理技士
・空気測定士
・向日市固定資産税評価委員会委員
「家を建てる」だけでなく「暮らしをつくる」ことを大切に、自然素材を活かした住まいづくりを提案している。
住まいづくりで悩む方々へ
「他社で質問しても今ひとつハッキリしない」
「いろいろ勉強してからスタートしたい」
いい家を建てたいなら、
いい住まいづくりをしないと失敗します。




