完成した家を見て「きれいだな」と感じるとき、その印象を決めているのはデザインや素材だけではありません。

実は、部材同士の“つなぎ目”である「納まり(おさまり)」の精度が、空間全体の美しさを左右しています。図面上ではわからない、職人の技と感覚が宿る部分――それが納まりの世界です。

納まりとは何か?

「納まり」とは、床と壁、柱と天井、建具と枠など、異なる素材や部材が交わる部分の仕上げ方を指します。

家中に無数に存在するこの“接点”をどう処理するかで、仕上がりの印象が大きく変わります。

たとえば、ドア枠と壁がわずかにずれていたり、巾木と床材の見切りが甘かったりすると、どれほど上質な素材を使っても違和感が生まれます。「納まり」は、空間の美を支える「見えないデザイン」と言えるかもしれません。

仕上がりを左右する3つの“納まり”ポイント

1. 建具まわりのラインをそろえる

建具や窓の高さ、巾木や天井ラインをそろえることで、空間全体に一体感が生まれます。

逆に数ミリのズレがあるだけで、視覚的な違和感が生じます。図面で寸法を指定していても、現場では微調整が必要です。そのラインを正確に合わせるためには、職人の経験と集中力が欠かせません。

2. 素材の厚み・動きを読む

自然素材は、季節や湿度で伸び縮みします。その「動き」を理解していないと、反り・ひび・段差が発生することも。

京都のように湿度が高い地域では、施工中に木材の水分量を確認しながら組み上げる職人もいます。素材が「生きている」ことを前提にした納まりこそ、本物の職人技です。

3. 下地づくりの丁寧さ

美しい仕上がりは、見えない下地の精度に支えられています。

下地の水平・垂直がズレていると、漆喰やクロスが波打ち、仕上げの美しさが損なわれます。“表に出ない部分こそ手を抜かない”――それが本当のプロの仕事です。

図面では伝わらない職人の感覚

設計図はあくまで「寸法の約束」であり、現場での最終判断は職人の手に委ねられます。

たとえば、光の入り方や影の落ち方を見ながら、「数センチ下げた方が美しい」と判断することもあります。それは数字では説明できない感覚であり、経験に裏打ちされた判断力です。

こうした「現場の美意識」を支えるのが、職人と現場監督、設計者の連携。意図を共有し合うことで、家全体の完成度が一段と高まります。

京都の家づくりにおける“納まり”の重要性

京都の町家や狭小地の家づくりは、限られた寸法の中でいかに美しく仕上げるかが鍵になります。

構造上の制約が多い分、納まりの工夫が必要であり、数ミリ単位の調整が全体の印象を決めることもあるでしょう。また、自然素材を多く使う京都の家では、素材の特性を理解した「調整力のある職人」が不可欠です。

納まりの丁寧さは、単なる美しさだけでなく、長持ちする家づくりにもつながります。

まとめ

家づくりの“完成度”は、設計やデザインではなく、最後の1ミリを仕上げる職人の手にかかっています。

図面で見えない部分を丁寧に整えることで、家全体が静かに整う――「納まりの美学」です。そして、その繊細な仕事こそが、住む人にとって「長く愛せる家」を形づくります。

京都市で家を建てるなら地元の工務店へ

京都での家づくりには、少し気をつけておきたい地域特有の事情があります。
たとえば「景観条例」に代表される独自のルールや、道幅が狭く土地の形が複雑な場所が多いことなど、他の地域とは少し異なる条件があるためです。

そうした背景をふまえると、地元での経験が豊富で、京都の家づくりに慣れている工務店を選ぶことが、安心につながるポイントになってきます。
土地や法規制に合わせたご提案や、現場でのスムーズな対応など、地域をよく知る工務店だからこそできることがあります。

あまねこう代表のプロフィール

この記事を書いた人

中川 高士

京都産業大学卒業。
2024年、京都府向日市より「向日市固定資産税評価委員会」委員を拝命。

実家が工務店という環境で育ち、幼少期から建築の世界に親しむ。
大手ハウスメーカー、地域ビルダー、そして社員一人の小規模工務店まで、28年以上にわたり幅広い建築会社で経験を積む。
営業職からスタートし、各社で現場管理・事業マネジメントまでを担い、建築の全体像を深く理解するに至った。

2023年に独立し、現在は「営業から現場管理までこなす建築マルチプレーヤー」として活動中。

【保有資格等】
・建築物石綿(アスベスト)含有建材調査者
・愛犬家住宅コーディネーター
・ホウ酸施工管理技士
・空気測定士
・向日市固定資産税評価委員会委員

「家を建てる」だけでなく「暮らしをつくる」ことを大切に、自然素材を活かした住まいづくりを提案している。

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