家づくりの現場では、よく「顧客目線で考えます」という言葉が使われます。

しかし、その「顧客目線」が、施主の視点と本当に一致しているでしょうか。実際には、工務店と施主のあいだには、言葉にしづらい“見えない壁”が存在します。

その壁を理解しないまま家づくりを進めると、打ち合わせでのズレや誤解が生まれ、結果的に不安や後悔につながってしまいます。

今回は、その壁の正体と、本当の顧客目線とは何かを考えてみましょう。

顧客目線とは「施主の理解レベルに寄り添う姿勢」

顧客目線は、施主の意見に全て従うことではありません。また、「説明を丁寧にする」だけでも不十分です。

本来の顧客目線とは、
施主がどこで迷い、何を不安に感じ、何を理解できていないかを先回りして捉える姿勢 のことです。

家づくりに必要な判断軸や専門知識は、多くの施主にとって未知の世界です。

その前提に立たず、「これくらいは分かるだろう」と話を進めると、施主は置き去りになります。

顧客目線とは、施主の立場へ“近づく努力”であり、ただ説明するのではなく伝わる形に翻訳することが重要です。

務店と施主の間にある“見えない壁”とは?

1. 知識のギャップ

工務店にとって当たり前の用語も、施主には未知の言語です。

「付帯工事」「躯体」「耐震等級」「プレカット」など、言葉の意味が分からなくても聞き返しづらい。

こうして不安が蓄積していきます。

2. 経験値のギャップ

工務店は年間数十件の家づくりを経験しますが、施主にとっては人生で一度です。

比較基準がない状態で判断するのは難しいのに、工務店はそれを理解しきれないことがあります。

3. 判断基準のギャップ

工務店は「性能」「コスト」「施工の難易度」から判断し、施主は「暮らし」「好み」「予算」から判断します。

この基準の違いに気付かないまま会話すると、すれ違いが生まれます。

4. 時間感覚のギャップ

施主には工程の「重さ」は見えていません。

そのため「なぜ急ぐのか」または「なぜ時間が必要なのか」が伝わらず、施主のストレスにつながります。

顧客目線は“説明”より“翻訳”が大事

顧客目線を勘違いすると、
「丁寧に説明すればいい」という形だけの対応になりがちです。

しかし大切なのは、施主が自分ごととして理解できる形に翻訳して伝えることです。

例えば、

  • 耐震等級の説明は「地震の揺れをどう感じるか」で伝える
  • 断熱性能は「光熱費」「結露」「体感温度」で語る
  • 選択肢は多く出すのではなく、優先順位に沿って出す

こうしたアプローチがあって、はじめて施主は「理解できた」と感じるのだと思います。

「見えない壁」をなくす工務店の姿勢

顧客目線とは、施主が理解しやすい順番を整え、迷わない状態をつくること。

そのために工務店がすべきことは、

  • わからない前提で話す
  • 迷いそうなポイントを先に提示する
  • 判断するための“軸”を一緒に整理する
  • メリット・デメリットを公平に伝える
    こうした積み重ねが、施主との距離を自然に縮めます。

工務店が一歩近づくことで、施主は安心して一歩踏み出せるのです。

まとめ

顧客目線とは、施主の言うことに従うことではなく、施主が理解しやすい環境を整える努力です。

工務店と施主のあいだにある「見えない壁」は、「知識・経験・判断基準の違い」から生まれます。

その壁を透明にし、対話しやすい関係をつくることこそが、本当の顧客目線だといえます。

筆者も、日々の打ち合わせの中で「本当に伝わっているか?」「施主の理解に寄り添えているか?」を自問しながら、顧客目線を磨いていきたいと思います。

京都市で家を建てるなら地元の工務店へ

京都での家づくりには、少し気をつけておきたい地域特有の事情があります。
たとえば「景観条例」に代表される独自のルールや、道幅が狭く土地の形が複雑な場所が多いことなど、他の地域とは少し異なる条件があるためです。

そうした背景をふまえると、地元での経験が豊富で、京都の家づくりに慣れている工務店を選ぶことが、安心につながるポイントになってきます。
土地や法規制に合わせたご提案や、現場でのスムーズな対応など、地域をよく知る工務店だからこそできることがあります。

あまねこう代表のプロフィール

この記事を書いた人

中川 高士

京都産業大学卒業。
2024年、京都府向日市より「向日市固定資産税評価委員会」委員を拝命。

実家が工務店という環境で育ち、幼少期から建築の世界に親しむ。
大手ハウスメーカー、地域ビルダー、そして社員一人の小規模工務店まで、28年以上にわたり幅広い建築会社で経験を積む。
営業職からスタートし、各社で現場管理・事業マネジメントまでを担い、建築の全体像を深く理解するに至った。

2023年に独立し、現在は「営業から現場管理までこなす建築マルチプレーヤー」として活動中。

【保有資格等】
・建築物石綿(アスベスト)含有建材調査者
・愛犬家住宅コーディネーター
・ホウ酸施工管理技士
・空気測定士
・向日市固定資産税評価委員会委員

「家を建てる」だけでなく「暮らしをつくる」ことを大切に、自然素材を活かした住まいづくりを提案している。

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