家づくりの打ち合わせが始まると、多くの方が「選択肢が多すぎて決められない」「なぜ迷っているのか自分でもわからない」という“打ち合わせ迷子”に陥りがちです。

しかし、この状態は施主の問題ではありません。

実際には、住宅会社側が「判断の軸」を提示せず、情報を整理するプロセスを提供していないことが大きな原因なのではないかと思います。

家づくりの打ち合わせは、家そのものをつくる前に「考え方を整える時間」。その基礎となるのが、今回紹介する3つの整理軸です。

打ち合わせ迷子が生まれる本当の理由

家づくりにおける迷いの多くは、情報量の多さと判断基準の不在から生まれます。

住宅会社から提案される多種多様な仕様、グレード、設備、素材‥などなど。

これらを比較しようとしても、何を基準に選べば良いのかがわからない。そのまま「決めること」だけが先行すると、施主は不安を抱えたまま打ち合わせが進んでしまいます。

また、住宅会社側が、

「これが一般的です」
「みんなこれにしています」

といった曖昧な言葉で進行すると、優先順位が見えないまま選択を迫られます。こうして施主が迷う状況が生まれますが、本来は工務店側が整理の軸を示すべきだと思います。

整理軸① “暮らし方”の軸

最初に整理すべきは、間取りでも設備でもなく「どんな暮らしをしたいか」です。

朝の動線、家事の手順、家族がどこで何をして過ごすか。
これらが明確になるだけで、間取りの方向性が自然と固まります。

例えば、

  • 朝の支度を短くしたい
  • 子どもがどこで勉強するか
  • くつろぎの時間をどう過ごしたいか
    こうした“日常の癖”が整理されると、迷いが一気に減ります。

家づくりの中心は「間取り」ではなく「暮らし」。
暮らしの整理こそが、打ち合わせ迷子を防ぐ最も強い軸です。

整理軸② “性能と維持コスト”の軸

次に大切なのが、図面では見えにくい住宅の根本性能です。

断熱性能、気密性能、耐震性、そして長く住むほど効いてくる維持コスト。
これらを整理しないまま進むと、「この性能で十分?」「グレードを上げるべき?」と迷いが増えていきます。

例えば、性能の優先順位を決めておくと

  • 断熱は必須
  • 耐震等級は最優先
  • 設備は後から入れ替え可能

    とように判断が明確になります。

性能の整理は、長く住んだ後の後悔を防ぐ軸
ここが曖昧な家づくりは、完成後の「こんなはずじゃなかった」につながります。

整理軸③ “予算と優先順位”の軸

最終的には、お金の整理が重要になります。

ただし、予算管理とは「削る作業」ではありません。
何を優先し、何を後回しにできるかを整理する作業です。

たとえば、

  • 絶対に譲れない部分
  • こだわりたいが代替可能な部分
  • 後から追加できる部分
    このように仕分けしておくと、見積書が出ても混乱しません。

予算の整理は、感覚ではなく“軸”の問題。この軸があるだけで、判断は驚くほどスムーズになります。

整理軸が揃うと「迷子」は消える

3つの軸が整理されていると、家づくりそのものの進行が変わります。

  • 選択の理由が明確になる
  • 工務店の提案の意図が理解できる
  • 判断のスピードが上がる
  • 迷いや不安が減り、後悔しにくくなる

打ち合わせの質が高まり、施主と工務店の関係性もより良いものになります。

工務店の役割は「整理の伴走者」

施主は家づくりのプロではありません。

判断軸をつくり、その順番に沿って話を進めるのは工務店や住宅会社の役割です。「選ばせる」のではなく、「判断できる状態をつくる」こと。

これこそが、施主を迷子にしない工務店の姿勢です。

住宅会社が情報だけを渡すのではなく、
「理解 → 整理 → 決断」
というステップに寄り添うことで、家づくりは安心感と納得感に満たされます。

まとめ

打ち合わせ迷子の原因は、施主の優柔不断でも知識不足でもありません。

整理軸が揃わないまま打ち合わせが進むという“構造的な問題”です。だからこそ工務店や住宅会社は、暮らし方、性能、予算という3つの軸を丁寧に整え、施主が迷わず決断できる環境を用意する必要があります。

筆者も、この「整理の伴走」を意識し、
一組一組の家づくりに寄り添いながら、迷わず進める環境づくりを続けていきたいと思います。

京都市で家を建てるなら地元の工務店へ

京都での家づくりには、少し気をつけておきたい地域特有の事情があります。
たとえば「景観条例」に代表される独自のルールや、道幅が狭く土地の形が複雑な場所が多いことなど、他の地域とは少し異なる条件があるためです。

そうした背景をふまえると、地元での経験が豊富で、京都の家づくりに慣れている工務店を選ぶことが、安心につながるポイントになってきます。
土地や法規制に合わせたご提案や、現場でのスムーズな対応など、地域をよく知る工務店だからこそできることがあります。

あまねこう代表のプロフィール

この記事を書いた人

中川 高士

京都産業大学卒業。
2024年、京都府向日市より「向日市固定資産税評価委員会」委員を拝命。

実家が工務店という環境で育ち、幼少期から建築の世界に親しむ。
大手ハウスメーカー、地域ビルダー、そして社員一人の小規模工務店まで、28年以上にわたり幅広い建築会社で経験を積む。
営業職からスタートし、各社で現場管理・事業マネジメントまでを担い、建築の全体像を深く理解するに至った。

2023年に独立し、現在は「営業から現場管理までこなす建築マルチプレーヤー」として活動中。

【保有資格等】
・建築物石綿(アスベスト)含有建材調査者
・愛犬家住宅コーディネーター
・ホウ酸施工管理技士
・空気測定士
・向日市固定資産税評価委員会委員

「家を建てる」だけでなく「暮らしをつくる」ことを大切に、自然素材を活かした住まいづくりを提案している。

住まいづくりで悩む方々へ

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