家づくりを考えるとき、多くの人が気にするのは「初期費用をどれだけ抑えられるか」という点ではないでしょうか。

しかし、住宅は建てて終わりではありません。むしろ、住み始めてから数十年にわたり発生する光熱費やメンテナンス費用こそが、家計に大きな影響を与えます。

つまり、家づくりで本当に大切なのは「初期費用」よりも「長期コスト(ライフサイクルコスト)」。そして、その差を生む大きな要因の一つが「住まいの素材」なのです。

初期費用だけで判断すると起こる失敗

「できるだけ安く建てたい」と思い、安価な建材や仕様を選んだ結果、10年も経たないうちに修繕や交換が必要になることがあります。見積もりの段階では得をしたつもりでも、トータルでは高くついてしまう典型的な失敗です。

さらに、断熱や気密の性能が十分でない家は冷暖房効率が悪く、光熱費がかさみます。毎月の電気代やガス代が積み重なれば、数十年後には数百万円単位の出費になりかねません。

「安く建てたつもりが、長く住んでみると割高」――これが初期費用だけに目を向けたときに陥りがちな落とし穴です。

長期コスト(ライフサイクルコスト)とは?

長期コストとは、家を建ててから解体するまでにかかるすべての費用を指します。主に以下のようなものが含まれます。

  • 光熱費(冷暖房・給湯など)
  • メンテナンス費用(外壁塗装・屋根の補修など)
  • 設備機器の交換や修繕費用
  • リフォーム費用
  • 最終的な解体費用

実は、これらの合計金額は初期費用を大きく上回ることが多いのです。だからこそ「長期的にどれだけお金がかかるか」を考えることが、家づくりの損得を分ける重要なポイントになります。

自然素材が長期コストを下げる理由

耐久性と経年美化

無垢材や漆喰といった自然素材は耐久性が高く、時間が経つほどに味わいが増します。安価な建材は数年ごとに交換や塗り替えが必要ですが、自然素材は部分補修で長持ちさせることができ、長期的にはコストを抑えられます。

健康被害を減らす

住まいの空気環境は、健康と直結しています。化学建材から発生するVOC(揮発性有機化合物)は、頭痛や不眠、アレルギーの原因となることがあります。

自然素材はこれらを含まないため、日常的に体への負担が少なく安心です。

ここで注目したいのが「生涯医療費」の視点です。日本人1人あたりの平均生涯医療費は約 2,700〜2,800万円 と言われています。そのうちの約6割(約1,600万円前後)は65歳以上でかかると推計されています。

これはつまり、高齢期にかかる医療費が大きな負担になるということです。

毎日暮らす家が不健康な環境であれば、呼吸器系やアレルギー症状、不眠などによって医療費や薬代が増え、生活の質を下げるリスクがあります。逆に、自然素材によって健やかな空気環境を保てれば、健康寿命を延ばし、医療費の増加を抑える一助となります。

「住まいは生活の器」であると同時に、「医療費に直結する投資」でもあるのです。

https://www.mhlw.go.jp/content/shougai_r04.pdf
※厚生労働省「生涯医療費」

光熱費の削減

自然素材と相性の良い高断熱・高気密の設計を取り入れると、冷暖房効率が高まり光熱費を削減できます。毎月の光熱費を数千円抑えるだけでも、30年スパンで見れば数百万円の節約になります。

初期費用と長期コストのバランスを取るには

短期的な安さだけで判断せず、10年後・20年後・30年後の暮らしを見据えることが大切です。

工務店に「外壁や屋根のメンテナンス周期は?」「この設備は何年持つ?」と確認し、将来の支出を可視化しましょう。そのうえで自然素材を選べば、快適性と経済性を両立した家づくりが可能になります。

まとめ

家づくりの本当の損得は「初期費用」ではなく「長期コスト」で決まります。自然素材は耐久性や経年美化で修繕費を減らし、健康被害を防ぐことで医療費の増加を抑える可能性も秘めています。

未来の暮らしを豊かにするために、そして不安のない生活を送るために――自然素材を選ぶことは長期コストを考えるうえで必然の選択なのかもしれません。

京都市で家を建てるなら地元の工務店へ

京都での家づくりには、少し気をつけておきたい地域特有の事情があります。
たとえば「景観条例」に代表される独自のルールや、道幅が狭く土地の形が複雑な場所が多いことなど、他の地域とは少し異なる条件があるためです。

そうした背景をふまえると、地元での経験が豊富で、京都の家づくりに慣れている工務店を選ぶことが、安心につながるポイントになってきます。
土地や法規制に合わせたご提案や、現場でのスムーズな対応など、地域をよく知る工務店だからこそできることがあります。

あまねこう代表のプロフィール

この記事を書いた人

中川 高士

京都産業大学卒業。
2024年、京都府向日市より「向日市固定資産税評価委員会」委員を拝命。

実家が工務店という環境で育ち、幼少期から建築の世界に親しむ。
大手ハウスメーカー、地域ビルダー、そして社員一人の小規模工務店まで、28年以上にわたり幅広い建築会社で経験を積む。
営業職からスタートし、各社で現場管理・事業マネジメントまでを担い、建築の全体像を深く理解するに至った。

2023年に独立し、現在は「営業から現場管理までこなす建築マルチプレーヤー」として活動中。

【保有資格等】
・建築物石綿(アスベスト)含有建材調査者
・愛犬家住宅コーディネーター
・ホウ酸施工管理技士
・空気測定士
・向日市固定資産税評価委員会委員

「家を建てる」だけでなく「暮らしをつくる」ことを大切に、自然素材を活かした住まいづくりを提案している。

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