家電量販店でエアコンを購入する人が増えている理由

エアコンを購入する際、家電量販店での購入を検討する方は非常に多く、特に注文住宅や新築住宅の場合でも「エアコンは量販店で買うもの」という感覚が一般的になりつつあります。
住宅会社や工務店の方からも「量販店の方が安いですよ」と勧められるケースも少なくありません。
もちろん、家電量販店での購入自体に問題があるわけではありません。
しかし、そこには“見えない落とし穴”が潜んでいることも。特に、設置に関わる施工不良や後々のメンテナンス性において注意が必要です。
見落としがちな「右抜き」「左抜き」とは

右抜き・左抜きの違いと影響
エアコンを設置する際、室内機から冷媒管やドレンホースを外に出すために、壁に穴を開ける必要があります。このとき、
- 室内機の右側から抜く場合を「右抜き」
- 左側から抜く場合を「左抜き」
と呼びます。
右抜きでも左抜きでも原則どちらでも設置可能です。
ですが、建物の周囲環境やメンテナンス性を考慮せずに設置すると、後々の工事で大きな差が出てくることがあります。
なぜ左抜きが適切な場面があるのか
たとえば左抜きであれば、室内側で冷媒管の取り外しや接続ができるため、外部で足場を組んだり、テラス屋根を取り外すといった大がかりな工事を回避できるケースもあります。
しかし量販店での設置では、
- 追加部材(エルボー)の費用を嫌う
- 冷媒管の長さが伸びてコストアップ
- 一日数件回る下請け職人の作業効率優先
といった理由から、深く考えずに右抜きが選ばれることもあるのです。
施工トラブル①|右抜きが原因で将来の大掛かりな工事に
実際に筆者が相談を受けたケースをご紹介します。
築10年の戸建住宅で、「スリーブ管に不具合がある」とのことで調査を依頼されました。
断熱材(セルロースファイバー)が室内に漏れてきているという状況でした。
調査してみると、1階LDKと2階寝室に設置されたエアコンが、右抜きで施工されていたことが原因で、以下のような問題が発生していました:
- テラス屋根が接しており、冷媒管の脱着に屋根の取り外しが必要
- 隣家との距離が狭く、足場を組むしかない状況
左抜きであれば、こうした手間は不要で、室内側での作業で済んだ可能性がありました。
施工トラブル②|スリーブ管を削って設置された事例
スリーブ管とは、エアコンの配管を通すための管です。
このケースでは、なんとそのスリーブ管を削って無理やり配管を通し、削った部分をコーキングで塞いでいたのです。
正直、筆者もこのようなケースは初めて目にしました。
当時、量販店から派遣された職人は「スリーブ管の勾配が逆で設置できない。だから削る」と説明したそうですが、後日チェックすると勾配には何の問題もありませんでした。
想定される理由は以下の通り:
- 職人の技術不足で設置できなかった
- ダクトレール(配管を隠す部材)を切りすぎて、数センチの余裕が必要になった
いずれにせよ、こうした施工は建物の性能や耐久性にも悪影響を及ぼす可能性があります。
施工トラブル③|技術不足による「設置できない」事態
意外と知られていませんが、エアコンの設置自体は電気工事士の資格がなくても可能です。
家電量販店では、大量のエアコン設置を短時間でこなすために、多くの下請け職人を抱えています。
そのため、職人にはスピードと件数が求められ、技術力にばらつきがあるのが現実です。
たとえば以下のような相談が実際にありました:
- 「エアコンから水が漏れる」
- 「設置できないと言われて工事中止」
- 「スリーブ管の勾配が悪いと言われた」
現場で確認すると、ただ室内機が斜めに設置されていたためにドレン排水ができていなかっただけ。
機器を外して再設置することで、問題はすぐに解決しました。
まとめ|住宅会社や工務店への相談が安心への近道

家電量販店でエアコンを購入すること自体に問題はありません。
実際、筆者自身も量販店で購入したことがあります。
しかし、現地で作業する職人のスキルや、イレギュラーな施工が必要なときに、「その一手間を惜しまないか」が、後々のトラブルを左右するのです。
注文住宅や新築住宅の場合は、特に住宅会社や工務店にあらかじめ相談し、
- 配管の経路
- スリーブ管の位置や勾配
- メンテナンスのしやすさ
などを確認しておくことが、安心・安全なエアコン設置につながります。
京都市で家を建てるなら地元の工務店へ
京都での家づくりには、少し気をつけておきたい地域特有の事情があります。
たとえば「景観条例」に代表される独自のルールや、道幅が狭く土地の形が複雑な場所が多いことなど、他の地域とは少し異なる条件があるためです。
そうした背景をふまえると、地元での経験が豊富で、京都の家づくりに慣れている工務店を選ぶことが、安心につながるポイントになってきます。
土地や法規制に合わせたご提案や、現場でのスムーズな対応など、地域をよく知る工務店だからこそできることがあります。
この記事を書いた人

中川 高士:あまねこう代表
京都産業大学卒業。
2024年、京都府向日市より「向日市固定資産税評価委員会」委員を拝命。
実家が工務店という環境で育ち、幼い頃から自然と建築の世界に親しむ。
大手ハウスメーカー、地域ビルダー、そして社員一人の小規模工務店まで、様々な建築会社で28年以上にわたり経験を積む。営業職からスタートし、各社で現場管理・事業マネジメントまで幅広く担ってきた。
2023年に独立。
現在は「営業から現場管理までこなす建築マルチプレーヤー」として活動中。
「愛犬家住宅コーディネーター」「ホウ酸施工管理技士」「空気測定士」などの資格を活かし、「家を建てる」だけでなく「暮らしをつくる」ことを重視した住まいづくりのサービスを提供している。
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