こんにちは、京都市西京区で自然素材を使った住まいづくりを行っている「あまねこう」工事担当の中川です。

先日、現場で左官職人さんと話している中で「漆喰ってやっぱり強いな」と実感する出来事がありました。 そんな中、ふと思い出したのが“軍艦島”の話——。

自然素材は本当に長持ちするのか?その疑問に答えてくれるような、実例をご紹介します。

軍艦島とは?過酷な自然環境に残された建築物

長崎県にある「軍艦島(正式名称:端島)」は、かつて海底炭鉱の島として栄えた人口密集の人工島です。現在は無人島ですが、その歴史的価値から世界遺産にも登録され、多くの廃墟が今なお残されています。

特徴は何と言っても、島全体がコンクリート建築で形成されていること。そして台風、塩害、湿気という厳しい自然環境に常にさらされてきた場所であるという点です。

そんな軍艦島の中でも、いまなお姿を保っている“ある素材”があります。

漆喰は本当に弱い?軍艦島の例から見る真実

漆喰が残るという事実

自然素材=弱い、というイメージを持っている方も多いかもしれません。 しかし実は、軍艦島の一部には漆喰仕上げの壁が残っており、100年近く経った今でも崩れることなく、その姿を留めているのです。

そしてまさに軍艦島が世界遺産に登録されたのがこの部分なのです。
軍艦島そのものが登録されたわけではありません。

漆喰は石灰を原料とし、耐火性・調湿性・抗菌性に優れた壁材。 実際に江戸時代からの蔵や町家でも、漆喰壁は現存しています。

つまり、「適切に使えば、漆喰はコンクリートに劣らないほど丈夫」であるという証明が、軍艦島に存在しているのです。

天川土とは?昔から選ばれてきた“持ちのいい”土

天川土の特性

漆喰の下地材として使われる「土」も重要です。 なかでも「天川土(あまかわつち)」は、奈良県天川村で採れる非常に質の高い粘土質の土。

この天川土は、乾燥後に収縮やひび割れが起こりにくく、強度・粘り気ともに優れています。漆喰と組み合わせて使うことで、長期間にわたり構造をしっかり支えてくれます。

昔の土蔵や町家でも、天川土を使っていたからこそ、今も建物が残っていると言っても過言ではありません。

石灰素材の違い|漆喰は「気硬性」です

気硬性と水硬性の違い

石灰系素材には「気硬性」と「水硬性」の2種類があります。日本の漆喰は一般的に「気硬性」で、空気中の二酸化炭素と反応してゆっくり硬化していきます。

一方、「水硬性石灰(NHL)」は、ヨーロッパなどで使われる水と反応して硬化するタイプの石灰です。硬化後も水に強く、湿気の多い環境でも安定した性能を発揮します。

軍艦島のように湿気や塩害が激しい環境では、この水硬性石灰のような素材が適している場合もあり、施工環境に応じた使い分けが重要になります。

「自然素材なのに、水に強くて長持ちする」——こうした特性を持つ石灰素材も存在するのです。

自然素材でも「丈夫で長持ち」できる理由

素材と技術の両輪がポイント

無添加住宅や自然素材の家づくりを選ぶ方にとって、「長持ちするのか?」は大きな関心事です。

軍艦島の例からわかるのは、自然素材=脆弱という思い込みは誤りで、 素材の選び方と、職人の施工技術次第で、100年以上耐える力を持たせることができるという事実です。

漆喰や天川土といった、昔から受け継がれてきた“本物の素材”は、私たちの暮らしを静かに、でも力強く支えてくれる存在なのです。

今後も、自然素材にまつわる豆知識や事例をブログの方でも発信していきます。

今回はちょっと固いハナシでしたが、施工現場での思いつきだったので工事日記でアップさせたいただきました。住まいづくりに役立つ情報はこちらのブログから。ぜひ住まいづくりにお役立てください。

「住まいづくりに役立つブログ」

https://amanekou.com/category/weblog/

京都市で家を建てるなら地元の工務店へ

京都での家づくりには、少し気をつけておきたい地域特有の事情があります。
たとえば「景観条例」に代表される独自のルールや、道幅が狭く土地の形が複雑な場所が多いことなど、他の地域とは少し異なる条件があるためです。

そうした背景をふまえると、地元での経験が豊富で、京都の家づくりに慣れている工務店を選ぶことが、安心につながるポイントになってきます。
土地や法規制に合わせたご提案や、現場でのスムーズな対応など、地域をよく知る工務店だからこそできることがあります。

あまねこう代表のプロフィール

この記事を書いた人

中川 高士:あまねこう代表

京都産業大学卒業。
2024年、京都府向日市「固定資産税評価委員会」委員に任命される。

実家が工務店という環境で育ち、幼い頃から自然と建築の世界に親しむ。
大手ハウスメーカー、地域ビルダー、そして社員一人の小規模工務店まで、様々な建築会社で28年以上にわたり経験を積む。営業職からスタートし、各社で現場管理・事業マネジメントまで幅広く担ってきた。

2023年に独立。
現在は「営業から現場管理までこなす建築マルチプレーヤー」として活動中。
「愛犬家住宅コーディネーター」「ホウ酸施工管理技士」「空気測定士」などの資格を活かし、「家を建てる」だけでなく「暮らしをつくる」ことを重視した住まいづくりのサービスを提供している。

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